「How」はいらない。「What」を考える
「始めに『How』ありきでは駄目だ。『What』を探せ」というのは、会社にとって最重要であり、顕在化していない場合も多々ある。「How」とは、「どのように〜するか」という発想である。ある所与の目的があって、その目的を達成するための方法を考えるというものである。
しかし、戦略においては「そもそも何をするのか」という「What」を考える発想が大切である。
業界セグメント分析で「目線」を変える
・みろくの里
常石グループの中に「みろくの里」という施設がある。遊園地と研修施設を兼ね備えた複合施設で、スポーツ合宿や修学旅行生などを受け入れて何とか黒字にしていたが、設備更新をできるほど利益が上がらず、将来展望が描けていなかった。
「サービス品質をどう上げるか」「笑顔で接客するにはどうすればいいか」といった「How」だけでは覆せない構造である。そこから、低稼働期の9〜2月に売上を出すには何をするか、という「What」を課題にした。
何をどう売ればいいのか。まず、自分達が持っている商品と買い手を書き出して、マトリックスを作る。セグメント分析し、商品については「体験学習」、買い手については「学校」にターゲットを絞った。そこで子供向けの「段ボール船」を作る体験学習を作った。「レジャー施設市場」でも「ホテル市場」でもなく、それを「体験学習市場」というセグメントに着目したから、「What」の発想が可能になった。
・常石鉄工
常石鉄工はグループ内下請けである。舵やスクリューといった船尾品をグループ会社の常石造船に供給している。「買い手」はほとんどが「常石造船」であり、これまで取り組むべきことは、常石造船に対し、いかに安く、早く、高品質なものを納品するかという努力。つまり「How」であった。
常石造船の船尾品市場でなく、世界の船尾品市場で、常石鉄工の実力はどうなのかに目を向けた。「市場」は、売る人間がどう考えるかによって新しい地平が拓ける。そこで、市場について、競合のメーカーや取引実績のない造船会社を訪れて数字を集めた。
顧客の声(VOC)を徹底的に集め、検証する
「中国製品は安い」「系列外から買わない」という一般論を口にする暇があったら、現地に行って、自分の目で見て、耳で聞く。中国の造船会社の多くは門戸を閉ざしていなかった。さらに中国の船尾品メーカーが意外と「高コスト」構造になっていることに気付いた。
常石鉄工は「中国市場を船尾品で攻める」という方向に経営の舵を切った。グループ内下請け企業は、市場を「売る意志」に基づいて再定義した。そして、顧客の声を集めることで、会社のあり方を変えた。