マイケル・ポーターの『競争の戦略』は、今も事業戦略を策定する際に多く用いられる。しかし、多くの日本企業は『競争の戦略』を正しく理解できておらず、うまく使いこなせていないとする。
どのようにして『競争の戦略』を事業に活かし、昨今の厳しい経営環境から抜け出せば良いか。戦略コンサルタントとして、多くの経営戦略を支援してきた著者が、『競争の戦略』を実務に使えるように解説している。
■日本企業が結果を出せていない理由
停滞市場では、競合企業とともに自社が成長することは難しい。市場のパイの大きさは一定か縮小するので、自社が成長するためには、競合企業からシェアを奪い取らなければならない。そのため、競争戦略の重要性は、この20年間増してきている。
しかし、多くの日本企業は次の理由により、事業戦略が結果を出せないでいる。
・戦略策定のスピードが遅すぎる。
・それぞれの事業が置かれた環境に応じた事業戦略を策定していない。
差別化を機能させる方法
①顧客に「有意差」を感じさせること
ターゲット顧客が「違い」を認識して初めて、氾濫している競合企業の製品やサービスではなく、自社の製品やサービスを選択する理由ができる。
これまでの常識を覆して、新しい「違う」価値を提供する場合、顧客に対して驚きでも違和感でも良いので、「???」を創り出さなければならない。そのためには、常に賛否両論がでるエッジの効いた差別化を目指すべきである。
②簡単に真似されない差別化を実現すること
多くの日本企業は「機能差」で差別化を図るが、他の企業もその部品を調達できるので、差別化はすぐに模倣される。長く差別化を機能させるには、営業改革や物流改革といった企業活動(バリューチェーンの一部)で差別化を図る。または、ビジネスモデルによる差別化により、バリューチェーン全体を差別化する。
③次から次へと差別化を実現すること
次から次へと差別化を実現するには、企業・組織レベル、戦略担当レベルで以下のようなことに注意する。
・経営陣の言うことを真に受けると、エッジが削られ、無難なものになる。
・全員賛成の意見は、差別化が機能しない。
・失敗を許容・評価する仕組みがなければ、差別化を実現できない。
著者 牧田 幸裕
1970年生まれ。信州大学 経営大学院 准教授 アクセンチュア戦略グループ、サイエント、ICGなど外資系企業のディレクター、ヴァイスプレジデントを歴任。2003年IBMビジネスコンサルティングサービスへ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。主にエレクトロニクス業界、消費財業界を担当。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院経済・社会政策科学研究科助教授。07年より現職。
週刊 ダイヤモンド 2012年 5/19号 [雑誌] |
日本経済新聞 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
PART1 なぜ事業戦略は機能しないのか? | p.11 | 26分 | |
PART2 なぜ『競争の戦略』を使いこなせないのか? | p.43 | 29分 | |
PART3 顧客に「有意差」を感じさせられるか? | p.79 | 45分 | |
PART4 簡単に真似されない差別化を実現できるか? | p.135 | 23分 | |
PART5 次から次へと差別化を実現できるか? | p.163 | 27分 | |
PART6 プロフェッショナルの戦略立案担当者になれるか? | p.197 | 13分 | |
あとがき | p.213 | 4分 |
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コモディティー化した市場では、単純に『競争の戦略』にいう差別化は難しい。結局、イノベーションの問題となるが、イノベーションを起こすのは容易ではない。
2011-11-30
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