スマートフォンやソーシャルメディアなどによる新しい依存症の仕組みを紹介している一冊。人がインターネットによって、ある種の依存症に陥っている現代を解説しながら、その対策を紹介しています。
■新時代の依存症
人間は、ある行動が1回限りなのか、それとも2回、もしくは100回繰り返すべきことなのか、そもそも一度も手を出さない方がいいのか、反射的な費用便益計算を積み重ねて決めている。メリットがコストを上回るなら、同じ行為を繰り返さずにいるのは難しい。特にそれが神経学的にジャストなツボを押さえているとなれば、せずにいることの方が不可能だ。
何らかの悪癖を常習的に行う行為を「行動嗜癖」という。昔から存在していたが、ここ数十年で昔よりずっと広く、抵抗しづらくなり、しかもマイナーではなく極めてメジャーな現象になった。ドラマを一気に何話分も視聴せずにいられないビンジ・ウォッチングや、頻繁にスマートフォンを覗かずにいられないのは、新しい依存症と言える。テクノロジー自体は道徳的に善でも悪でもない。問題は、そのテクノロジーを生み出す企業が、大衆に積極的に消費させることを意図的に狙って開発し、運営していることだ。アプリや各種プラットフォームは、充実したソーシャル体験を追い求めたくなるように、タバコと同じく依存症になるようにデザインされる。
テクノロジーの発展と社会の変化によって、何らかの悪癖を常習的に行う「行動嗜癖」が広がった。最近の研究によると、最大40%の人が、メール、ゲーム、ポルノなど、ネットに関連した依存症のいずれかを抱えている。行動嗜癖には6つの要素がある。
①目標:ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること。
②フィードバック:抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で、報われる感覚があること。
③進歩の実感:段階的に進歩・向上していく感覚があること。
④難易度のエスカレート:徐々に難易度を増していくタスクがあること。
⑤クリフハンガー:解消したいが解消されていない緊張感があること。
⑥社会的相互作用:強い社会的な結びつきがあること。
重要なのは、行動嗜癖がこれほど蔓延している理由、それが人間の心理を巧みに操る様子、そして有害な嗜癖を退けて役に立つものを取り入れていく方法を、私たちが理解していくことである。
著者 アダム・オルター
ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス マーケティング学科准教授 専門は行動経済学、マーケティング、判断と意思決定の心理学。『ニューヨークタイムズ』『ニューヨーカー』『WIRED』『ハフポスト』など、多数の出版物やウェブサイトで精力的に寄稿するほか、カンヌ国際広告祭やTEDにも登壇。 2013年の著書『心理学が教える人生のヒント』は、ニューヨークタイムズのベストセラーとなり、マルコム・グラッドウェルやダン・アリエリーから絶賛されている。
帯 作家 マルコム・グラッドウェル |
帯2 ハフィントンポスト創設者 アリアナ・ハフィントン |
帯3 ペンシルバニア大学ウォートン校 教授 アダム・グラント |
帯4 作家 ダニエル・ピンク |
週刊東洋経済 2019年9/21号 [雑誌](子どもの命を守る ―虐待、事故の真相を探る―) スクウェイブ代表 黒須 豊 |
帯5 作家 スーザン・ケイン |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第1章 物質依存から行動依存へ――新しい依存症の誕生 | p.3 | 34分 | |
第2章 僕らはみんな依存症――何が人を依存させるのか | p.45 | 23分 | |
第3章 愛と依存症の共通点――「やめたいのにやめられない」の生理学 | p.73 | 23分 | |
第4章 〈1〉目標――ウェアラブル端末が新しいコカインに | p.103 | 29分 | |
第5章 〈2〉フィードバック――「いいね! 」というスロットマシンを回しつづけてしまう理由 | p.139 | 29分 | |
第6章 〈3〉進歩の実感――スマホゲームが心をわしづかみにするのは“デザイン"のせい | p.175 | 23分 | |
第7章 〈4〉難易度のエスカレート――テトリスが病的なまでに魅力的なのはなぜか | p.203 | 24分 | |
第8章 〈5〉クリフハンガー――ネットフリックスが僕たちに植えつけた恐るべき悪癖 | p.233 | 26分 | |
第9章 〈6〉社会的相互作用(ソーシャル・インタラクション)――インスタグラムが使う「比較」という魔法 | p.265 | 22分 | |
第10章 〈1〉予防はできるだけ早期に――1歳から操作できるデバイスから子どもを守る | p.295 | 26分 | |
第11章 〈2〉行動アーキテクチャで立ち直る――「依存症を克服できないのは意志が弱いから」は間違い | p.327 | 31分 | |
第12章 〈3〉ゲーミフィケーション――依存症ビジネスの仕掛けを逆手にとって悪い習慣を捨てる | p.365 | 25分 | |
エピローグ まだ見ぬ「未来の依存症」から身を守るために | p.397 | 3分 |
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