スティーブ・ジョブズの後を継いだアップルCEOティム・クックとは、どのような人物なのかを紹介している一冊。ジョブズの死後、なぜアップルが当初の予想に反して、成功を収めることができたのかが書かれています。
■最高の人選
資材調達の経歴を持つティム・クックは、アップルにとって、そしてジョブズ個人にとって、最も適した人物だった。ジョブズはクックに会うとすぐに、彼が製造に関して自分と同じ見解を持っていることに気が付いた。「クックは私と同じビジョンを持っていて、高いレベルで戦略を話し合うことができたんだ」と彼は語っている。
1998年3月、ジョブズは当時37歳のクックをワールドワイドオペレーション担当上級副社長として雇い入れた。その基本給は40万ドル(約4500万円)で、さらに50万ドル(約5600万円)が契約金として支払われた。クックはアップルの製造と流通を徹底的に見直すという、非常に重要な役割を与えられていた。そして、これは、ジョブズがこれまで決断した中で最高の人選の1つだった。
■ティム・クックの価値観
アップルは世論をものともせず、ティム・クック体制の下で、かつてないレベルの成功を収めている。ジョブズの死後、才能ある社員の多くがアップルを去り、鍵となるプレイヤーがライバル社に引き抜かれるのではないかという恐れがあったが、クックはジョブズから引き継いだマネジメントチームを強く団結させ、そこを自ら採用した賢く実績のある社員たちを補った。彼はジョブズの死後の不安定な時期に、アップルをうまく軌道に乗せ、信じられないほどの成長に結びつけただけでなく、社内文化の改革を導いてもいた。
アップルはクックの下で、以前のような冷酷で殺伐とした職場ではなくなった。そのために主要製品が白紙に戻ったり、利益が減少したりすることもなかった。ジョブズはチーム同士、個々の役員同士でさえよく競い合わせたが、クックはより円満な方法を好み、以前は自分たちのことしか考えていなかったチーム同士が協調する機会を増やし、対立といざこざの元凶だった少数の役員たちを立ち去らせた。
企業は良い価値観と一体となった戦略をとるべきだと、クックは強く信じている。2017年末、アップルの経営における6つの核となる価値観が公開された。
①アクセシビリティ
アップルは、アクセシビリティを基本的人権と捉え、テクノロジーはすべての人に利用可能なものであるべきだと考える。
②教育
アップルは、教育を基本的人権と捉え、質の高い教育を誰でも受けられるようにすべきだと考える。
③環境
アップルは、製品のデザインと製造過程において、環境に対する責任を果たす。
④インクルージョンとダイバーシティ
アップルは、多様性のあるチームが革新を可能にすると考える。
⑤プライバシーと安全性
アップルは、プライバシーを基本的人権と捉え、すべてのアップル製品は、顧客のプライバシーと安全を徹底的に保護するためにデザインされている。
⑥サプライヤー責任
アップルは、サプライチェーンで働く人々を教育し、その成長を支援し、最も貴重な環境資源の保護に取り組んでいく。
これら6つの価値観は、リーダーとしてのクックをより明確にし、アップルでこれまで行ってきたすべての土台となっている。
著者 リーアンダー ケイニー
1965年生まれ。CultofMac.com編集者兼発行人 ジャーナリスト WiredやMac Weekの元シニアリポーターで、Cult of Macの運営者。20年以上にわたって、コンピューターやテクノロジーに関する記事の執筆を行っており、4冊の書籍を出版しているベストセラー作家。記者兼編集者として12年以上にわたってアップルを取材している。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 論 | p.3 | 5分 | |
第1章 スティーブ・ジョブズの死 | p.19 | 16分 | |
第2章 深南部で形作られた世界観 | p.41 | 20分 | |
第3章 ビッグブルーで業界を学ぶ | p.69 | 19分 | |
第4章 倒産寸前の企業に加わる一生に一度の機会 | p.95 | 19分 | |
第5章 アウトソーシングでアップルを救う | p.121 | 13分 | |
第6章 スティーブ・ジョブズの後を引き継ぐ | p.139 | 31分 | |
第7章 魅力的な新製品に自信を持つ | p.181 | 26分 | |
第8章 より環境に優しいアップル | p.217 | 22分 | |
第9章 クックは法と闘い、勝利する | p.247 | 23分 | |
第10章 多様性に賭ける | p.279 | 28分 | |
第11章 ロボットカーとアップルの未来 | p.317 | 17分 | |
第12章 アップル史上最高のCEO! | p.341 | 11分 |