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2019/08/13更新

本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか

161分

3P

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本業転換に必要な視点

企業の生き残り戦略を整理すると、本業に代わる事業として「どの事業を選ぶか(What)」と「新事業の開始時期(When)という2つの視点が重要である。

存続企業の共通点は、本業に代わる新たな収益源として、自社の技術やノウハウを生かせる分野を選定していた。また、新事業を開始した時期は、本業から得られるキャッシュフローがまだ十分であり、企業体力がある時期であった。つまり、WhatにもWhenにも成功していた。

一方、衰退企業の共通点は、本業に代わる新たな事業として、何をやるべきか、何をやるべきでないかという事業の選択がうまくできなかった。また、戦略を実行に移す時期が遅すぎた。つまり、WhatとWhenのいずれか、または両方につまずいた。

本業の衰退は、経営の根幹を揺るがす危機である。本業の衰退スピードを的確に予測して、事業構造を組み換えながら、企業として生き残っていかなければならない。次の収益の柱として事業が成長するまでには、ある程度の時間と資金を要する。選択した事業が花開くまでには、いくつもの失敗も経験しなければならない。そのための財務力も必要である。このように、本業転換にはWhatとWhenの両方の視点で、正しい戦略を打つことが必要である。

本業転換にあたっての経営上の示唆

①本業と新事業の関連性
本業と関連の高い多角化の方が成功確率は高いと言われるが、その関連性を考える上で2つの注意点がある。

1. 遠そうで近いもの
市場や業種から見れば遠いものであっても、外から見えないコア・テクノロジーでシナジーが見込める場合がある。

2. 近そうで遠いもの
マネジメントにおける重点の置き方などの違いによって、関連多角化のリスクが低いとは必ずしも言い切れない。

②やらないことを貫く
環境が激変している時期には、今後「何をすべきか」という予測は難しい。しかし「やらない」というのは、企業の意志であり、その分野に資源を投入しないということであり、環境が変わろうがぶれることはない。

③本業転換を早急に求めない
日本企業の場合、買収で本体と同じような規模の事業を取得すると、マネジメントの上で難しい問題が起きる。自社より大きい会社を買収した経験がほとんどないからである。

④新事業に本業の規模を求めない
大きな本業が衰退していく中、企業は会社の事業規模を維持することに目が行きがちである。通常、本業はその企業で一番大きな売上を占めており、規模も大きい。その売上減を補うのに、規模が1/20の事業を始めても、経営者には焦りが出てくる。

⑤転換の必要のない時に本業転換の準備をする
本業が衰退し、キャッシュフローが十分得られなくなった段階では、多額で長期の投資が必要な事業には進出できない。