量子コンピュータの開発状況
2019年4月現在で、単純に搭載可能で操作可能となった量子ビット数は、ベンチャー企業IonQが79量子ビットを搭載したチップを発表している。2進数で最大限79桁の数値(10進数で約23桁)を扱うことができる。IonQにはAlphabetやAmazonが出資しており、サービスとして登場する日も近いだろう。またGoogleは、72量子ビットを搭載したチップを2018年3月に発表し、現在その性能の評価や検証が進んでいる。
ただ、現在の技術によって実現した量子ドットは、まだ完全にエラーを克服することができない。つまり、計算を行っていくに連れて、そのエラーが積み重なってしまい所望の計算結果がうまく出てくるとは限らない状況にある。そのため何度も計算を行い、その中から、どうやらこれが正しい結果だと推定する必要がある。その意味で確実なものとなっていない。
一部の特殊な計算においてその有用性が見出されており、量子ビットのエラーに耐えるための研究が始まり、今日では実現可能であることがわかり、非常に強力なエラー耐性を持つ仕組みを築きあげるに至っている。このエラー耐性を持つには、非常に多くの量子ビットが必要である。現状の量子ビットの品質から見積もられる数字として、1つの量子ビット分の情報を保つためには、数千から数万量子ビットが必要とされている。そのために量子ビット自体の品質の改善と、大量の量子ビットを用意するという2つの方向性で技術進化が求められている。
現状の量子コンピュータは、この量子ビット特有の脆さにより量子ビットを持つ重要な性質である重ね合わせの状態が続く時間が短いという問題をはらんでいる。量子ビットの性質を維持できる間でしか計算を行うことができないため、多くの手間をかけた計算を実行することができないという問題を抱えている。
量子アニーリング
量子コンピュータは、重ね合わせの状態で、単純な0と1の動きではなく、計算の途中の過程にいて複雑な変化を利用することで効率的に計算をする新しい仕組みを持つコンピュータである。その完璧な実現の前に、量子コンピュータと同様に重ね合わせの状態を利用した特殊用途(パズルを解く)のために開発されたのが量子アニーリングを実行するマシンである。
これは、重ね合わせの状態を取る量子ビットを利用して、0と1を取るσに量子ビットを割り当てて、世の中に数多ある組み合わせ最適化問題を解いてみようというものである。
量子アニーリングでは、利用されているエンタングルメント(量子もつれ)の効果が弱く、本来量子コンピュータに期待されている最大限のパフォーマンスを発揮できない。しかし、これからの進展次第では、その性能が発揮されて、量子コンピュータに匹敵する能力を有するという考え方もある。