量子コンピュータの仕組みから、現時点の開発状況や将来性までをわかりやすく紹介している一冊。期待される量子コンピュータの現状を理解することができます。
■量子コンピュータはこれまでと違う動作で、作業を効率化する
コンピュータの速さを決める要素は2つある。1つは、コンピュータそのものの速さ。もう1つは、そのコンピュータの内部で行われている細かい計算の回数によって決める速さである。つまり、一度の計算の速さとその計算の回数が、総合したコンピュータの速さに関係する。
この「作業の手数を少なくする」のが量子コンピュータの特徴である。量子コンピュータは、これまでのコンピュータと異なるため、できることにも違いがある。手数が少なく、一部の特殊なものは手際よく計算を終わらせることができるものがある。うまい操作方法が、役に立つ計算もあれば、役に立たないものもある。そのため、量子コンピュータの計算能力をうまく活用できる問題設定でないと、その効果を発揮できない。使い所が重要となる。
■量子コンピュータの特徴
量子コンピュータは、量子力学の基本原理の1つである重ね合わせの原理というものを利用して、これまでのコンピュータで利用してきたビットの概念を拡張した量子ビットを利用する。
これまでのコンピュータでは、0と1という明確な区別のつくビットという概念を利用して計算をしてきた。それに対して、量子ビットは0と1を頂点としたブロッホ球という概念上で考える。同じ0と1を扱うビットでも、その中間的な状態を取ることができる。この0と1の半々の状態が重ね合わせの状態である。この中途半端な状態でも、最後の結果を読み出すと0か1に帰着する性質をうまく利用すると有効な計算手法となる。
2つ以上の量子ビット表すと、より大きな桁の数字を扱うことができる。量子ビットでは単純に扱える数が以上に、エンタングルメント(量子もつれ)という機能を持つ。計算結果として0か1を決定づけると、その結果を反映して他の計算結果が定まるという性質である。こうした一部の結果から、他の途中計算結果に対して、一斉に情報処理を行うことで、手際のいい計算を行うことができる。
量子コンピュータは、素因数分解のように膨大な数の可能性の中から1つだけを取り出すという利用に向いている。様々な数字の重ね合わせの状態を利用して、中途半端な向きで、0と1の中間的な状態から計算を始めることができるからである。
正解を得るために、様々な候補の中から最も有力なものを絞り込むところで威力を発揮する。重ね合わせの状態で複数の候補を同時に検討して、エンタングルメントを利用した効率の良い絞り込みを行う。
著者 大関 真之
1982年生まれ。東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻 准教授 東京工業大学産学官連携研究員として量子アニーリングの研究に従事したのち、ローマ大学物理学科研究員、京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教を経て、2016年から現職。 2012年に第6回日本物理学会若手奨励賞、2016年に平成28年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。
著者 寺部 雅能1983年生まれ。デンソー先端技術研究所 担当係長 2007年デンソー入社。2011年DENSO Automotive Deutshcland GmbH出向。現在、デンソー先端技術研究所担当係長。 専門はコンピュータアーキテクチャ、車載通信、センサ信号処理、MOT、標準化
帯 メルカリ会長兼CEO 山田 進太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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Chapter 1 量子コンピュータはもう目の前に!? | p.1 | 19分 | |
Chapter 2 量子コンピュータは難しい? | p.37 | 46分 | |
Chapter 3 量子コンピュータで変わる車と工場の未来 | p.124 | 28分 | |
Chapter 4 量子コンピュータで世界を変える企業が描く未来 | p.178 | 54分 | |
Chapter 5 量子コンピュータと社会のこれから ―リーンスタートアップと共創が世界を変える― | p.281 | 25分 | |
あとがき | p.328 | 4分 |
量子力学的な重ね合わせを用いて並列性を実現するとされるコンピュータ。 量子コンピューターで計算…
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