ダイアローグの思想
自己も他者なくして存在できない。他者を通じて意味付けられることで、自己が生み出されている。自己が存在するということは、他者と対話的に交流することなのである。生きるということは、対話に参加することであり、尋ね、耳を傾け、答え、同意したりすることである。他者との対話をを続けていく生成の過程においてのみ、意味ある自己であり続けられる。
こうした対話の思想の柱となるのが「ポリフォニー(多声性)」である。複数の対話が対等に並存し、融合することなく、自由でありながら、1つのまとまりを持っている状態のことを言う。
他者と対話できるためには、他者との意見や見解の不一致がなければならない。そうした違いが各人の声の多様性を生み出し、ポリフォニーを成り立たせている。対話する者の間では、究極的な答えの一致を目指すことはない。対話は、お互いの違いを認め合い、時として闘い合い、常に逆転の可能性を秘めたものである。こうした他者との対話が、対話する者をどちらも変えながら、両者の間に新しい意味をつくりだし、豊かにしていく。
5つのポイント
オープンダイアローグは、ビジネス全般において広く用いて効果をあげることができる。ビジネスにおけるオープンダイアローグは「壁をつくらず、とらわれず、問うて気づき、応えて学び合う」ことである。ビジネスにおいて、オープンダイアローグがうまくいくには5つのポイントがあり、これらを押さえれば創造力を解き放ち、イノベーションを生み出すことができる。
①多様性
メンバーの多様性は、創造力を刺激して新しく役に立つアイデアを生み出す。多様性があってこそ、違いを生む違いである情報を得ることができる。
②主体性
前提として、一人一人が主体性を持ってやり取りすることが必要である。一人の主体として「私はこう思う」「私はこう考える」という自分の意見や判断にもとづいてやり取りする態度である。
③傾聴
対話を成り立たせるには、相手の主体性をも尊重しその話をよく聴くことが不可欠である。
④質問
相手の話に耳を傾けてよく聴いていると、自ずと疑問や質問が心に浮かんでくる。相手に問いかけ答えを求めて訊くことになる。問題について適切な問いかけをすることは、答えを見つけて解決することよりも大切である。対話での質問は「〜についてどう思いますか」などのように、オープンクエスチョンがよい。
⑤内省
深く学んで成長するためには、内省することが不可欠である。内省は、行為に変化を起こすことを意識して、前提から疑い、自分自身の考え方ややり方について深くかえりみて吟味する、振り返りである。