VRが市場に出てから30年。当時の最先端の研究と状況について1991年に出版された本を復刻させた一冊。30年近く前の状況から現在はどのようになったのかを振り返ることができます。
■VR30年
2019年はVRが商用化されて30年という記念すべき年だ。VRといえば、2016年にオキュラス社が599ドルで市場に出したHMD(ヘッドマウントディスプレイ)システム『Oculus Rift』が近年のブームに火をつけたと言われ、その後にはスマホを取り付けて手軽に使える安価なタイプから、ハイエンド製品まで各社から続々と売り出されたことは記憶に新しい。それを受けるように、HMDを使ったゲームやVRを体験できるテーマパーク型のシアターも全世界で続々と作られ、ネットでVRゲーム動画や360度映像を配信するサービスも多数始まった。
VRはHMDに限られるわけではなく、最近のスマホのGPS機能やジャイロセンサーなどを使ったAR的な利用法は広がっている。ハリウッドも映画のコンテンツをVRで楽しめる、新しいエンターテインメント開発に力を入れており、オリンピックやW杯のような世界的なスポーツイベントなど、大型3DシアターやHMDを使った事例が増えつつあり、VRは次世代のトレンドを牽引するキーワードになっている。
VRのルーツを遡れば、人類の遠い祖先たちが狩猟の成功を祈って描いた洞窟画から始まり、絵画や彫刻を介して表現された様々な作品や、近代のジオラマや映画表現まで、広い意味では人類の文明を可能にしたすべての想像力の問題にまで行き着く。
コンピューターの発明によって、その想像力はさらに大規模で直接的に表現され、我々の世界をより強力にドライブするようになった。ところが我々はまだ、VRがいかに現実を忠実に表現するかばかりに気をとられ、それがリアルかフェイクかという論議に拘泥しているばかりで、VとRのギャップは埋まりそうもない。
バーチャルの反対語はアクチュアルでありリアルではない。VRは想像力のもたらす可能世界の選択肢であり、その中から選ばれた何かが現実のアクチュアルなものに収束するのであって、バーチャルな想像力こそ、リアルを可能にする我々という絵を成り立たせているキャンバスであり潜在意識そのものなのだ。
著者 服部 桂
1951年生まれ。関西大学客員教授 1978年に朝日新聞入社。1980年代に米通信系ベンチャー企業出向後、MITメディアラボ客員研究員。 科学記者、「ASAHIパソコン」副編集長、「DOORS」編集委員、「PASO」編集長などを歴任。 1994年に朝日新聞初のインターネット連載。その後、デジタル面、beを担当。2011年からジャーナリスト学校でメディア研究誌「Journalism」を編集。 2016年に退職後は関西大学客員教授、早稲田大学、女子美術大学、大阪市立大学で非常勤講師
帯3 作家 ハワード・ラインゴールド |
帯 カリフォルニア大学バークレー校起業家・技術センター客員教授 ジャラン・ラニアー |
帯2 デジタルハリウッド大学学長 杉山 知之 |
帯4 筑波大学教授 岩田 洋夫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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『VR原論』のためのまえがき | p.3 | 6分 | |
第1章 人工現実感とは何か? | p.31 | 51分 | |
第2章 走り出した人工現実感研究 | p.113 | 60分 | |
第3章 Reality Engine Builders 人工現実感を実現する製品 | p.209 | 26分 | |
第4章 人工現実感の応用と展望 | p.251 | 29分 | |
VR30―もしくは長いあとがき | p.297 | 16分 |
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