セキュリティーへの配慮不足がグーグルを衰退させる
グーグルの無料サービスの最も重大な影響は、セキュリティー問題からの回避である。無料のものをわざわざ盗もうとする人はいないので、巨大生産ラインが無料ならハッカーや泥棒から守る必要も、安定した状態を維持する必要もない。グーグルは、セキュリティーに関する責任を顧客に負わせるという傲慢な保証をオンライン上に掲出する。セキュリティーへの配慮不足は、グーグルの衰退の原因になるだろう。
インターネット上のセキュリティは、明らかな崩壊を迎えている。セキュリティーシステムが崩壊し始めたのは、コンピュータ業界にいる者たちが機械の能力を盲信し、顧客である人間の能力の限界について、企業側が傲慢な言葉を発するようになってからだ。
現在のセキュリティー、プライバシー、知的財産、事業戦略、テクノロジーの危機的状況は、既存のコンピュータやネットワークの枠組みの中だけでは解決することができない。セキュリティーは、あらゆるサービスの基本であり、あらゆる取引で無視できない。また、あらゆる情報テクノロジーの一番の基本となる不可欠な要素である。
ネット上でビジネスを行なっている事業者にとって、セキュリティー意識の欠如は、現在のビジネスモデルの最大の脅威になっている。但し、その問題は解決に向かっている。聞いたことのないような企業でさえも、セキュリティー対策には巨額を投じるようになった。そうなると「取引の安全性」を最大の責務に掲げる新たなネットワークが生まれる。「事後の対応」ではなく「システムそのもの」に責任を持つネットワークだ。
セキュリティーが基本的要件となる、グーグル後の「新たな世界システム」は「クリプトコズム(秘密保持の世界)」と呼ばれるようになるだろう。
グーグル後の世界
「セキュリティーの脆弱性」「人を集めて広告を見せるビジネスモデル」「無料へのこだわり」「顧客データの縦割り」「人工知能のビジョン」、これらをグーグルが続ける限り、分散型のピア・ツー・ピア技術による抜本的な改革が行われた世界「クリプトコズム」では生き残ることはできない。今や、いたるところで大勢のエンジニアや起業家が「グーグルの世界」を超越する新たなシステムを考案している。
「グーグルの世界」では、インターネットの重要なルールは「コミュニケーション・ファースト」だった。つまり、あらゆるものが「フリー」に複製され、移動され、加工されるということである。この世界において、セキュリティーはデバイスやその所有者の財産ではなく、トップからあてがわれるネットワーク機能である。そのため、すべてのものがグーグル本社に集約され、スピードや効率性が実現された。
しかし、今こそ新たな「情報のアーキテクチャー」を構築する時である。