SECIモデル
形式知は暗黙知を基盤として生成され、形式知の伝達においても意味解釈が行われる際には、個人の暗黙知が介在する。但し、知識は動態的プロセスであり、固定した「モノ」ではない。知識の根本には、潜在的に働いている「動詞」あるいはプロセスとしての暗黙知、より正確には暗黙的統合があり、それを固定化・表出化したものが「名詞」あるいはプロダクトとしての形式知である。暗黙知と形式知は互いに独立して存在するのではなく、グラデーションをなす動的連続体である。
組織的知識創造プロセスを説明するSECIモデルは、個人・集団・組織・社会のレベルの暗黙知と形式知の相互変換を示す集合知のモデルである。
①共同化
個人が他者との直接対面による共感や、環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する。
②表出化
個人間の暗黙知を対話・思索・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などをつくり、集団の形式知に変換する。
③連結化
集団レベルの形式知を組み合わせて物語や理論に体系化する。
④内面化
組織レベルの形式知を実践し、成果として新たな価値を生み出すと共に、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして体得する。
つまり、①思いを共感し、②共感を概念に、③概念を理論に、④理論をノウハウや知恵に変換していく。この4つのフェーズをスパイラルに繰り返すことによって、知識は個人、集団、組織の間での部分~全体を循環しながら、新たな知をつくり、それが新たな価値へと結実して、新たな関係性を生み出し、社会的組織としてのエコシステムにおける知識創造へとつながっていく。
本質直観
「現象から本質へ」を目指す現象学的アプローチでは、目に見えている事象の背後に、経験を超えた本質的な意味や価値を問う。現象の意味は、直接経験する人や物事との相互作用の中で意識化され、それが本質直観を通じて普遍化されていく。
意味とは、相互に異なるものの中から類似性を探求するプロセスから生成される。類似性はその裏腹として差異性も示唆する。正しいと言えなくとも、似たような方向性を追求しながら、これはどう考えてもありえない、というものを捨てて本質に迫る。本質直観は、絶えず変化する現象の只中で、多くの類似性の中から「こうしか言いようがない」という唯一の同一性に綜合するプロセスである。
①対象物と他のものとの類似性を知覚する
②類似性の中に潜む同一性を考察する
③「自由変更」を駆使し、物事の普遍的な本質を洞察する
この本質直観は、SECIモデルにおける状況に応じた「部分~全体」のダイナミックプロセスである暗黙的統合やアブダクションと通底するプロセスと言える。