アップルのソフトウェア部門での成功に欠かせない7つの要素
①インスピレーション
着想。広い視野を持って発想し、様々な可能性を考える。
②コラボレーション
他者と協力し、互いの強みを活かし補完し合う。
③テクニック
スキルを使って質の高い結果を得る。そして、常により良い仕事ができるように励む。
④勤勉さ
つまらない仕事でも、必要なら手抜きや妥協をせずにやり抜く。
⑤決断力
難しい選択を、遅れたり、引き延ばしたりせずに行う。
⑥テイスト
感性。見るめを養い、「魅力的でありながらまとまりのあるもの」をつくるバランスを見つける。
⑦共感力
他者の視点から世界を見、彼らの生活とニーズに適応するものをつくる。
7つは、スティーブ・ジョブズの絶対的な権威と妥協のないビジョンによるトップダウンと、無名のデザイナーやプログラマーの日々の取り組みによるボトムアップ、双方向から加えられる圧力によって結果的に結晶化された創造の要素である。
7つの要素は複数を組み合わせることも多い。さらに8番目の要素として、人間味を加える。明確なゴールと優れたアイデアの実現に取り組みながら、7つの要素を活用し、さらに人間味を加えたアプローチを行う。これらを積み重ねて成り立つアップルの創造法を「クリエイティブ・セレクション」(創造的選択)と呼んでいる。
明確かつ具体的であれ
アップルの最重要目標は「すばらしいソフトウェアをつくること」である。スティーブは「素晴らしいソフトウェアをつくることが会社の基幹業務」だと強調していた。スティーブは「行動」を求めるので、ソフトウェアチームは継続的にデモを行った。新たな成果があれば、スティーブは時間を取ってデモレビューに出席し、自ら実物を確認した。スティーブが積極的に関わることが、進歩を生み、勢いをつけたのだ。
デモは、アップルでの仕事の根底をなしていた。デモを通じて、可能性を浮き彫りにし、コンセプトを考察し、進捗を示し、議論を促し、製品をつくるための判断をした。
デモが有用であるためには、あらゆることが「明確かつ具体的」でなければならない。明確かつ具体的な例があるかないかが、「難しい不可能とも思える議論」と「子供の遊びのような簡単な議論」の差だった。アップルの仕事は、この基本的な事実に基づいている。デモによって反応が生まれる。その反応は、極めて重要だ。1回のデモに対する直接の意見が、次のデモに発展するための弾みになる。意見をもらいながら何度もデモを積み重ねることは、実体のないアイデアを実体のあるアイデアにするプロセスの中心となる。
プロセスが良い結果に結び付くと、そのプロセスを進化させ、改善していった。ダーウィンの進化論に学び、自らより良いものを選びとっていった。