いかにファイナンスを人生に役立てるか。ファイナンスの歴史や物語をもとに、ファイナンスの仕組みを簡単に紹介している一冊。ハーバード・ビジネス・スクールの卒業生に向けた講義の内容がまとめられています。
■確率を直観的に理解するのは難しい
人生は偶然に支配されている。人生は秩序のあるものではなく、現実には偶然が大きな役割を果たす。そして、人生は偶然に支配されているが、それと同じくらいに、人間は決まったパターンから抜け出せない。
ファイナンスの本質とは、人生におけるリスクと偶然性の役割を知り、支配的なパターンを自分の得になるように利用することに他ならない。
確率に関して、直観に悩まされるのは仕方ないことだ。人類の歴史のほとんどの間、確率をめぐる直観はいつもあてにならなかった。偶然はどんなに頑張っても減らせないし、どこにでも存在する。だが、偶然を理解し、厳格に分析することは可能だということに人間が気づくのに、1000年もかかっている。
ファイナンスとはつまるところ、先の見えない危険な世界にどう対処したらいいかを理解するための、一連のツールである。
ファイナンスの世界は野蛮で、善き人生を送りたければそんな野蛮な場所に足を踏み入れてはいけない、と多くの人が思い込んでいる。金融は昔から悪者扱いされてきた。金融は世の中にほとんど貢献していないと思われている。
金融市場に不信感を抱く人は多い。それは、金融市場が人間らしさの敵だと思われているからだが、真実はおそらく正反対だ。金融は人間らしさと切っても切り離せない。人類最古の原始的な人間関係、つまり売り手と買い手の関係、貸し手と借り手の関係の中で、人間は別の人間と交渉し、相手に対する自分の価値を測るようになった。価格を決め、価値を測り、同等のものを持ち寄り、それらを交換する。人間はこの時、価値を測る存在として、自分自身を定義した。
著者 ミヒル・A・デサイ
ハーバード大学教授 ビジネス・スクールでファイナンスを教え、ロースクールでは税法を教える。ファイナンスという難科目を担当しているにもかかわらず、2001年にはビジネススクールで教える優秀な教師を表彰する学生協会賞を受賞するほどの人気教授。 経済と金融の評論家としてメディアにもたびたび登場。コーポレート・ファイナンスから公共政策まで、幅広くコメントしている。その研究は金融専門誌だけではなく、経済誌やニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで取り上げられている。
帯 ハーバード大学経済学部教授 オリバー・ハート |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
イントロダクション ファイナンスと善き人生の関係について | p.1 | 9分 | |
第1章 人生はルーレット、確率で理解できても結局、ままならない | p.17 | 25分 | |
第2章 人生というリスキー・ビジネスをどう渡っていくか | p.59 | 25分 | |
第3章 人間の価値とファイナンスの価値 | p.101 | 19分 | |
第4章 人間は、本当は誰のために働いているのだろう | p.133 | 24分 | |
第5章 おカネのない恋愛、ファイナンスなき合併 | p.173 | 23分 | |
第6章 夢を生きるためのレバレッジ | p.211 | 24分 | |
第7章 失敗の責任と倒産のファイナンス | p.251 | 19分 | |
第8章 なぜみんなファイナンスが嫌いなのか | p.283 | 16分 | |
あとがき | p.310 | 3分 |