3種類の文書のいずれかを念頭に置く
役人の基本は文章であり、正確な文書をつくりうることは有能な役人の基本的な条件である。その仕事の精髄が政策の企画立案である場合、代表的には霞が関の中央官庁である場合、まず、その仕事のプロセスで書くべき文書には性質の異なった3種類のものがあることに留意すべきである。
3つの文書は、政策決定のプロセスにおいて、それぞれ異なった役割と性質を持つ。従って、その書き方及びその背後にある考え方も異なっている。1つの文書を書こうとする者は、自らが今その3つの内のどの文書を書こうとしているのかを明確に頭に置くべきである。
①分析の文書
政策を決定しようとする場合にまず必要とされる文書は、その対象となっている事態についての分析の書である。ここではそのテーマについて、できるだけ正確な情報を可能な限り客観的に収集分析し、中立的に叙述する。作成過程においては、特に大学、研究機関の成果を最大限取り入れることが必要である。
この分析の文書の質を高めるのは、その分析の深さである。従って、この文書をいかによく書けるかは、一般的な文書作成の技術を除けば、そのテーマについてどの程度深い知識を持っているかにかかっている。
②検討の文書
この文書の中心は、ある特定の政策目的を達成するために有効と思われる各種の個別措置の具体的な内容と、それら各種の措置のメリット及びデメリットの記述である。政策を達成するための個々の措置に完璧なものはない。いかなる措置を最終的に採用するかは、このそれぞれの措置のメリット及びデメリットをどのように評価するかにかかってくる。
③説得の文書
幹部を含めて、ある政策実現のためにとるべき措置が決まれば、次に必要なのはその措置を関係者に説得するための文書が必要である。
説得の文書の大切な点は、その説得の相手方を意識した、それにふさわしいものとすることである。その表現方法、説明の論理、組み立て方もそれぞれの相手方にふさわしいものでなければならない。それぞれの持っている関心事項に視点を定めたものでなければならない。
良い文書の要領
①論点をすべてカバーする
すべての論点を網羅することは、個々の論点についての記述の内容よりも大切である。なぜなら、論点にも取り上げられていないことは議論されないことになる恐れがあるからである。
②誰が読むかを考える
特に役所の文書の場合にはそれが誰に読まれるかを考えて書くことが大切である。なぜなら、人によってそのテーマについての知識の程度、関心の深さ、関心の視点、などが違うからである。
③状況に応じたものをつくる
役所の内部の文書の場合、特に時間との関係において状況に応じたものでなければならない。