キーホールの誕生
当時、キーホールのスタッフは、イントリンシック・グラフィックスという別のスタートアップのオフィスの一角を間借りし、資金を前借りして、ソフトウェア開発を進めていた。
イントリンシックは、これから広く普及する可能性のあるパーソナルコンピュータでも使える地球のデジタルモデルを初めて作った。彼らのモデルではまず宇宙空間にある地球が見え、そこから地上を写した高解像度の画像にズームインすることができる。これはNASAからダウンロードした写真だった。
1999年、ジョン・ハンケとイントリンシックのブライアン・マクレンデンは、この技術の使い道を考えていた。ジョンは、キーホールを立ち上げ、イントリンシックのこのプロジェクトを引き継いだ。
ジョンはシードラウンドで資金を調達するつもりだったが、2000年、収益化への道筋が明確でないコンシューマー向けスタートアップに対するベンチャーキャピタリストの関心は冷めていた。結局、ジョンは資金を調達することができなかった。
B2Bへのピボット
キーホールは、インターネット経由であらゆるデータを持つ地球のデジタルモデルを見せることができるようにした。コンシューマーが、世界中のどこからでもローカルのアプリケーションと同じような滑らかさで、膨大な量の地図データにアクセスできるサービス『アースビュアー』が実現した。
2001年、キーホールは、ソニーベンチャーキャピタルから資金調達を行った。だが、ドットコムバブルの崩壊で再び資金調達ができる可能性が低い中、キーホールの預金残高は日に日に減っていった。キーホールはB2Bにピボットし、法人顧客の開拓を始めた。商業不動産市場は、キーホールに利益をもたらした。
イラク戦争によって注目を集める
衛星写真を保有するデジタルグローブと交渉し、世界中の画像が集まり、データベースが飛躍的に拡大する中、テレビ放送、NGO団体、軍、情報機関など、新しい市場に販路を見出そうとしていた。商業不動産市場での販売、コンシューマーバージョンなどの販売をたしあわせると、2002年のキーホールの売上は200万ドルとなった。それでも年間の支出は赤字であり、資金は底を尽きかけていた。
2003年、CNNとIn-Q-Telとの大型案件が決まった。CNNは、テレビ放送の中でキーホールを使って、イラク戦争の状況を伝えた。そのことで、軍関係者以外の人の目にもとまり、あらゆるビジネスやコンシューマーの関心を得ることができた。
グーグルへのバイアウト
2004年、グーグルからキーホールを詳しく知りたいと連絡があった。プロダクトをグーグル役員に見せると、セルゲイ・ブリンはシンプルに「この会社、買うべきだね」と言った。反対する者はいなかった。それで買収が決まった。