VR(仮想現実)は、現実世界での経験と同じように、人間の認知機能に影響を及ぼす。VRの心理学的影響の可能性とリスクを紹介し、VRの現在と未来を考えさせる一冊。
■VRの可能性
「現実の経験」と「メディアを通した経験」とのギャップは、VRによってこれまでよりずっと小さくなる。VRは実際の経験とそっくり同じではないものの、これまで存在したいかなるメディアよりもはるかに強い心理的影響力を持つため、我々の生活を劇的に変えることになりそうである。クリック1つで瞬時にあらゆる種類の経験を呼び出すことが可能になる。
VRによって我々は、滅多にできない経験ができるだけでなく、見るのが不可能なものを見たり、空想の世界にしかないものを見たり、現実世界を今までと違う視点から見ることもできるようになる。今の想像力の限界を超えた場所まで知性を広げることができる。
VRを経験することとビデオ映像を観ることには、1つの大きな質的な違いがある。「現実のように感じられるかどうか」という点だ。優れたVRはその経験が現実のように感じられる。そのため、現実世界の実経験と同じように、根本的でしかも永続的な変化を我々にもたらす可能性を秘めている。
VR経験は現実のように感じられ、人はそこから実際の経験に近い影響を受ける。従ってVR経験は、単なるメディア経験ではなく実際の経験だと理解した方がいい場合が多い。
著者 ジェレミー ベイレンソン
スタンフォード大学教授 VR研究の第一人者。スタンフォード大学でバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所を設立し、所長を務める。 現在のVRブームの発端となったフェイスブックによる「オキュラス」買収直前には、マーク・ザッカーバーグCEOがベイレンソン教授の研究室を訪れ、教授が制作した最先端のVRを視察していた。 心理学者としてキャリアを始め、人々のコミュニケーションについて研究を行う中で、VRが人の心理や行動に大きな影響を与える、従来にないまったく異質なメディアであることに注目。以後、VR心理学の専門家となる。
日経ビジネス 東京大学大学院経済学研究科教授 柳川 範之 |
週刊東洋経済 2018年10/6号 [雑誌] (相続が変わる) 中央大学商学部教授 江口 匡太 |
WEDGE |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 なぜフェイスブックはVRに賭けたのか? | p.9 | 15分 | |
第1章 一流はバーチャル空間で練習する | p.27 | 33分 | |
第2章 その没入感は脳を変える | p.67 | 34分 | |
第3章 人類は初めて新たな身体を手に入れる | p.109 | 31分 | |
第4章 消費活動の中心は仮想世界へ | p.147 | 28分 | |
第5章 二〇〇〇人のPTSD患者を救ったVRソフト | p.181 | 15分 | |
第6章 医療の現場が注目する〝痛みからの解放〟 | p.199 | 25分 | |
第7章 アバターは人間関係をいかに変えるか? | p.229 | 31分 | |
第8章 映画とゲームを融合した新世代のエンタテイメント | p.267 | 28分 | |
第9章 バーチャル教室で子供は学ぶ | p.301 | 21分 | |
第10章 優れたVRコンテンツの三条件 | p.327 | 15分 |