One Panasonic
会社に入社して上司に指示された仕事を毎日こなしていると、時々自分が何のために働いているのかわからなくなる。この会社にとって自分の存在はあってもなくてもいいんじゃないか、と思ってしまうこともある。
かといって、何かを変えたいと思っても、大企業で若手ができることは限られている。そのために、若手同士でもっとつながりたい。部署を超えてなるべくたくさんの人と会いたい、話したいと思って立ち上げたのが「One Panasonic」である。
この有志活動で約50回の交流会や勉強会を行い、のべ5000人の社内外の若手と時間を共にした。最初は小さな飲み会からスタートしたこの活動がきっかけで、様々な変化が生まれた。いろんな部署に知り合いが増えたことで、仕事のスピードが速くなり、自分の興味を仕事につなげることもできるようになった。社長をはじめ、役員たちと話す機会が持てるようになり、経営者の危機感や視座の高さをリアルに感じることができた。
「One Panasonic」の運営メンバーが取り組んだ企画は枚挙にいとまがない。その中でも、「ようこそ先輩」と名付けた、社内のミドルマネジメント層を呼んで講演をしてもらうイベントは、「One Panasonic」の転機となった。この取り組みを重ねることで、ミドル層との信頼関係が生まれ、活動を応援してもらえる機会が少しずつ増えていった。
ハッカソンの開催、パナソニック初のベンチャー出向、新規事業創出部門の立ち上げ・運営、社内副業の解禁など、「One Panasonic」のメンバーが表になり裏になり働きかけた社内のプロジェクトは多い。少しずつ会社が変化している兆しも感じられるようになった。
「One Panasonic」の活動が注目を集めると、取材や講演の依頼が増えた。記事を読んだり、講演を聞いたりした若手から、連絡が来るようになった。そして、有志団体同士が横につながれる場をつくろうと考えるようになり、ONE JAPANの立ち上げメンバー、26社の有志団体のリーダーたちが集結した。
心理的安全性を保証する
ONE JAPANを運営するにあたって、何より重要視したのは、「心理的安全性」が保証された場にすることだ。前例のないことに挑戦しようとすれば、失敗する可能性もある。ONE JAPANは、メンバーにとって失敗が許容される安全な場所でなくてはならない。
この「心理的安全性」を確保するために、ONE JAPANでは、会議でみんなにまんべんなく話してもらうことや、初めての人を全員で迎え入れることなどに注力している。若手が安心してチャレンジできる場であるONE JAPANでは、社の枠組みを超える共創が次々と生まれ、事業化まで進むケースが相次いだ。