人の好き嫌いは何によって決まるのか。
いまだに解明されていない人の好みについて、科学的な知見を紹介している一冊。
■期待と記憶が好みをつくる
好みとは、つまり期待と記憶のことだ。何かを楽しみにしている時でも、それを前回楽しんだ時の記憶を振り返っている。そして、期待は好みを後押しする。私たちはあるものを「これはお気に入りだ」と思って過ごすのに負けず劣らず長い間、「これが気にいるといいな」と思って過ごす。
面白い映画だったと事前に感想を聞かされていると、その映画を実際に見る時に2つのことが起こりうる。1つは「同化」だ。感想を聞いて期待が高まったことで、感想を聞かなかった場合よりもその映画が好きになるケースである。もう一方の「対比」では、さほど期待していなかった場合よりも余計にがっかりする。
食べ物については、私たちは同化しやすい。見るよりも前に頭の中で試食して楽しみにしている。人はある品物が期待通りであればあるほど、それだけその品物を気に入り、期待からずれているほど好きにならない。食べ物の場合は常にそういうことがあり、その際、その食べ物への実際の知覚反応はほとんど関係しない。
私たちは自分が何を好きなのか、自分のしていることのどこが好きなのかをわかっていないことがよくある。好みには様々な無意識のバイアスが付きまとい、その時の状況や社会からの影響であっけなく揺れ動く。今日好きなものを明日も好きでいる可能性は思いがけないほど低く、以前に好きだったものを何が好きにさせたのかを憶えている可能性はさらに低い。
専門家の場合でさえ、本当に良いものを知ろうとしたり自分自身の感情を知ろうとしたりする時に、絶対的に正しい指針がある訳ではない。
心理学では、人は選んだものをより好きに、選ばなかったものをより嫌いになることで、決定後に不安になるのを避けようとするとされている。選ぶものに好みが影響するのと同じくらい、選んだものは好みに影響する。
著者 トム ヴァンダービルト
作家、ライター テクノロジー、サイエンス、カルチャーに詳しく、Wired、Slate、The New York Times、The Wall Street Journalなどに寄稿する。
帯 一橋大学教授 楠木 建 |
週刊東洋経済 2018年8月4日号 [雑誌](親の看取り方 悔いなく見送るために) 東洋英和女学院大学 客員教授 中岡 望 |
週刊ダイヤモンド 2018年 10/20 号 [雑誌] (1982~2018 偏差値&志願数 大学 学部序列〈367大学1178学部〉) 双日総合研究所チーフエコノミスト 吉崎 達彦 |
日経ウーマン 2018年 10 月号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.11 | 16分 | |
第1章 何を召し上がりますか―食べものの好みについて考える | p.31 | 44分 | |
第2章 誤りは私たちの星評価にあるのではなく、私たち自身にある―ネットワーク時代における好み | p.85 | 37分 | |
第3章 好みは予想できるのか―あなたのプレイリストがあなたについて語ること | p.131 | 41分 | |
第4章 なぜこれが好きだとわかるのか―芸術の陶酔と不安 | p.181 | 52分 | |
第5章 なぜ(そしてどのように)好みは変わるのか | p.245 | 41分 | |
第6章 猫と土とビール―専門家はよいものをよいとどうやって判断するのか | p.295 | 49分 | |
おわりに | p.356 | 6分 |
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