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実店舗は淘汰されるのか

消費者の思考回路は完全に切り替わり、新しい期待を抱くようになっている。オンラインでの体験に慣れた結果、オフラインでの体験にもそれを求めるようになっている。私たちは、絞り込み検索や商品比較、綺麗に整理された製品情報の閲覧などが可能なオンラインショッピングの世界にすっかり適応してしまった結果、実店舗のショッピングではそのような機能が使えないため、認知の機能不全を起こすようになった。

手軽さや利便性が売りのオンラインショッピングに対して、手間や過酷さがつきまとうオフラインショッピング。その差は開く一方で、近いうちに重大な転換点に到達するはずだ。

店はメディアになる

私たちの目の前で起こっていることは、「メディア」と「店」がそれぞれ担っていた役割が入れ替わるという歴史的転換である。メディアがある一線を超えて実質的に「店」になろうとしているのだ。これまでメディアは最初の情報伝達を担い、店は最後の商品配給の場であった。だが、今、メディアが商品配給の場=店になりつつある。商品に関するメッセージを送る段階から消費者が商品を購入する段階までの距離が消滅したのだ。今や雑誌に掲載されているインタラクティブ広告から直接購入できる時代である。

オンラインの小売の世界にも全く違う時代がやってこようとしている。ゴールはオンラインショッピングをどこまでも体験重視で直感的なものにし、なおかつ押し付けがましくなく、待たせることなく、その上人間的な要素まで提供することだ。

メディアは店としてさらに完璧になっていくだけでなく、近いうちにデジタルが実物かの区別さえ難しくなる。従来、店が担っていた役割をメディアが兼ねるだけでなく、店をはるかに上回るようになるだろう。私たちがイメージする店とは、自分で訪問しようと思って訪問する物理的な空間やアプリやウェブサイトだった。だが、今後はそのどれでもなくなる。私たちの持ち物や周囲、ひょっとすると私たちの身体の中にいつでも存在するようになる。

実際には、毎日、毎週、毎月のようなペースで使っている商品の大部分は私たちの意識から消え、技術が代わりにオーダーするようになる。2015年、アマゾンは「ダッシュボタン」なるサービスを導入した。超小型のWiFi接続端末で、特定商品を注文するだけの機能を持った文字通りのボタンである。これが未来に向かう第一歩だった。まもなく何千もの商品がネットワークにつながり、自ら交換時期を判断して自動発注できるようになる。

消費者が購入を決めるまでの一連の流れがなくなってしまったら、消費者にどのように売り込めばいいのか。どの分野であろうとマーケティング担当者なら、このゾッとするような問題に取り組まざるを得なくなる。