失敗を失敗と捉えない
「独自性」を手に入れるには、まず自分なりの情報処理能力を身につけること。自分なりの物差しを持って、普段から世の中と向き合えば、いろんな疑問を抱く。それを自分で掘り下げるクセをつけることで、独自の情報処理能力は自然と形作られる。
独自の物差しがあると、自分にとって必要な情報をキュレーションできるようになる。情報は随時入ってくる。しかし、独自の物差しを持っていなければ、より価値のある情報をキュレーションすることは難しいし、編集処理の質もそれだけ変わってくる。独自に編集処理した情報を持っていれば、その場に一番ふさわしい受け答えや態度をとることができる。それは、ある出来事が起こった時、とっさに修正が利く発想に繋がるからである。何か失敗があった時に、そのままで終わらせないで、それを活かすことができるようになる。
失敗を失敗と捉えない。ダメをダメのまま終わらせることが、一番ダメ。失敗を失敗で終わらせず、修正して経験を積み重ねることで、発想力は身につく。
「クリエーション・イノベーション・リノベーション」の法則
南仏のニースに店を出し、それを持続可能なものにするためには、南仏の自然から創造された郷土料理の数々を、現代に通じるような編集処理して新しく発想し、常に原点へ戻って改修することが欠かせない。
料理の「クリエーション」は、南仏の自然がもたらした食材の集まる、市場というカオスが生み出す。市場には毎朝、新鮮で豊かな食材が並び、そこへ通い続けることで、そのカオスの中から何をキュレーションするか、独自に編集処理能力が磨かれていく。
南仏の歴史と伝統が育んできた郷土料理のレシピは、それ自体がすでに創造された、地元で生きていくための知恵である。その日に手に入った食材から、郷土料理のレシピ通りに調理してみることは、先人の「クリエーション」を学ぶ貴重な経験である。
その一方で、郷土料理のレシピを基本コンセプトとして、常に新しい調理法を発想し、現代にふさわしいシンプルな一皿にアレンジするのも、欠かすことができない。それが料理の「イノベーション」である。
次に、常に原点に戻って改修する。その土地に深く刻まれた伝統を重んじ、一般からのレシピ情報をそのままにするのではなく、料理の基本コンセプトにもとっていたら正す。「クリエーション・イノベーション・リノベーション」の法則とは、過去から現代を経て、未来へ伝統を受け継いでいく大切な方法論である。