戦いは騙し合いである
「兵は詭道なり」
「詭道」とは騙すこと、欺くこと。敵の目をくらまし、判断を惑わすことである。『孫子』ではその内容を次のように語っている。
「例えば、できるのにできない振りをし、必要ないのに不必要と見せかける。遠ざかると見せかけて近づき、近づくと見せかけて遠ざかる。有利と思わせて誘い出し、混乱させて突き崩す。充実している敵には退いて備えを固め、強力な敵に対しては戦いを避ける。わざと挑発して消耗させ、低姿勢に出て油断を誘う。休養十分な敵は奔命に疲れさせ、団結している敵には難問をはかる」
報われる努力をせよ
「戦勝攻取して、その功を修めざるは凶なり」
「敵を攻め破り、敵城を奪取しても、戦争目的を達成できなければ、結果は失敗である」という。そうならないためには、あらかじめしっかりした戦略方針を立ててかからなければならない。
準備にこそ命をかけよ
「虞を以って不虞を待つ者は勝つ」
「虞」とは備え。だから「万全の態勢を固めて敵の不備につけこむ者は勝つ」といった意味になる。
主導権を確保せよ
「善く戦う者は、人を致して人に致されず」
相手をこちらのペースに乗せること、つまり主導権を握ることが勝利への近道なのだという。主導権を握るとは、作戦選択の幅が広いということに他ならない。こちらは作戦行動の自由を確保し、相手を身動きできない状態に追い込んでいく。
敵の意図を見破る
「上兵は謀を伐つ。その次は交を伐つ。その次は兵を伐つ。その下は城を攻む」
「最高の戦い方は、事前に敵の意図を見破ってこれを封じ込めることである。これに次ぐのは、敵の同盟関係を分断して孤立させること。第三は戦火を交えること。そして最低の策は、城攻めに訴えることである」という。
正攻法と奇策を織り交ぜる
「戦勢は、奇正に過ぎざるも、奇正の変は、勝げて窮むべからず」
戦争のやり方は、煎じ詰めれば「正」と「奇」の組み合わせに過ぎない。しかし、組み合わせの変化は無限なのだという。
有利と見たらたたみかける
「勢とは利に因りて権を制するなり」
「勢」とは戦う態勢、「利」とは有利な状況、「権」とは臨機応変の策。有利と見たら臨機応変に戦って勝利を収めるのだという。
勝算がなければ撤退せよ
「算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や算なきに於いてをや」
勝算の多い者が勝ち、少ない者が負ける。敵とぶつかって、明らかに相手の力が上、このまま戦ったのではこちらがやられるだけ、と見極めたら、無理をしないで早めに撤退し、戦力を温存する。情勢は常に変化しているのである。