岐阜県最北端の飛騨市に、世界80ヵ国から毎年数千人の外国人観光客を集める人気ツアーがある。タダの田舎の日常風景も立派な観光資源になると説き、飛騨市の観光戦略の取り組みと、これから日本に必要な観光戦略のあり方を紹介している一冊。
■クールな田舎をプロデュースする
観光協会では、民間企業の経営手法を取り入れ、「世界に通じる飛騨市を目指して」というスローガンを具現化するための具体的なアクションプランを列挙した。中でも重要なのは2つの項目で「英語版を実装した多言語サイト」と「ガイドツアーの実施」だった。
飛騨市は隣に高山や世界遺産の白川郷が控えており、それらと異なった魅力を発信して認知してもらうことができない限り、決して旅行者は足を運んでくれない。飛騨市に足を運んでもらう理由として「ガイドツアーの実施」を掲げた。
飛騨古川はとても素敵な静かな街であり、町並み景観としては国選定の伝統的建造物群保存地区である飛騨高山ほどの華やぎはないが、地域らしさはよりリアルに感じることができる。そんなわかり難い良さを伝えるためには「ガイドツアー」という仕掛けが必要だと提示した。そしてSATOYAMA EXPERIENCEの前身「飛騨里山サイクリング」が世に生まれた。
観光戦略を推進するための要諦はシンプルに2つ。
①「観光」から「ツーリズム」へ遷移させる必要がある
「観光」は、日帰りか一泊二日か長くて二泊三日程度の旅行。週末やGW、盆暮れ正月などのピークシーズンに人が動く。宿泊施設の外に出ることは限定的で、個人旅行よりも団体旅行がメイン。
一方、「ツーリズム」は、世界中の多種多様な旅行スタイルに合わせた多種多様なサービスを提供するスタイルを指す。宿泊、飲食、アクティビティ、移動など、日本国内に存在する選択肢は、グローバルスタンダードと比べればまだまだ足りない。
②やり続ける
地方部の人口減少は長い時間軸で進んだ。だから、地方創生を実現するためにも、それなりの時間や継続した努力を想定しておかねばならない。地域の現状に鑑み、地域の将来像を夢とともに描き、その夢の実現に向かって愚直に努力する。これを地域全体で進められるか否かが鍵となる。
著者 山田 拓
1975年生まれ。美ら地球(ちゅらぼし)代表取締役 プライスウォーターハウス・コンサルタント(現:IBM)にて多くのグローバル企業の企業変革支援に従事した後、退職。その後、モンベル社等のスポンサー支援を受け、足かけ2年、29カ国にわたる世界放浪の旅に出発し、期間中はWebサイト「美ら地球回遊記」を通じて、小学校との交流、雑誌記事執筆、現地からのニュースリポートなどを行う。 帰国後、地方部の原風景に受け継がれる日本文化の価値を再認識し、岐阜県の飛騨古川に移住。2007年、「クールな田舎をプロデュースする」株式会社美ら地球を飛騨古川に設立。自らの旅人経験を活かし、里山や民家など地域資源を活用したツーリズムを推進する。 ボランティア活動や調査など、地域住民との地域資源の保全活動をベースとし、国内外のSATOYAMAに魅了される人々の1ストップソリューション「SATOYAMA EXPERIENCE」をプロデュース。農村集落を巡るガイドツアー「飛騨里山サイクリング」、古民家をオフィス用途に転用した「里山オフィスプロジェクト」など、中山間地での新たな複数のビジネスを内包する。 2013年「地域づくり総務大臣表彰にて個人表彰を受ける。
帯 小西美術工藝社 社長 デービッド・アトキンソン |
帯2 日本総合研究所調査部 主席研究員 藻谷 浩介 |
エコノミスト 2018年 2/20 号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 4分 | |
第一章 グローバルカンパニーと世界放浪を経て飛騨へ | p.15 | 13分 | |
第二章 日本の田舎は世界に通じる | p.38 | 16分 | |
第三章 タダの景色でお金を稼ごう | p.66 | 29分 | |
第四章 大変だけど楽しい田舎暮らし | p.119 | 14分 | |
第五章 企業経営の手法を地域経営に | p.144 | 13分 | |
第六章 日本と世界の田舎をクールに | p.167 | 17分 | |
あとがき | p.197 | 1分 |