パターンを見つけて概念化するのが得意になる
脳は歳をとるにつれて、ただ衰え始めるのではない。「経験」「熟練」によって文字通り変化する。中年になる頃には、脳は強力なシステムを発達させるので、複雑な問題の本質に切り込んで具体的な答えを見出すことができる。中年脳は感情や情報を冷静に扱う。より素早く、より柔軟に、より陽気にさえなる。
年長者の脳は、新しい情報に直面すると、それを吸収して活用できるようになるのに若い脳よりも時間がかかる。しかし、すでに知っていることに少しでも関係のある情報に直面すると、「中年脳」は素早く賢く働いて、パターンに気づき、論理的な最終地点に飛んでいける。
新しい研究では、世界観が広がったり、パターンを識別する能力や点と点を結びつけて全体像が見えるようになる能力が身についたり、より創造的になったりするのは、脳の老化過程の性質そのものなのかもしれないことを明らかにしている。
処理能力は遅くなり、集中力は低下する
中年の脳は老化現象から守られている訳ではない。顔と名前の結びつきは、歳をとるにつれて弱くなる。脳の処理速度も多少遅くなる。
また、最近の研究で、脳にはうわの空になる「デフォルト・モード」という状態があることが発見された。これは空想にふけっているような感じで、脳は静かでありつつも内部的にはペチャクチャ喋っていて、注意が散漫になる状態をいう。脳は歳を重ねるにつれてこの状態に入る回数が多くなり、注意がそらされる。年長者は関連する情報に集中できるが、注意をそらせる情報を無視できず、干渉に圧倒されてしまう。
2つの脳を使う
中年期に入ると、人は脳の片側ではなく両側を使う能力を発達させ始める。両側の脳を使うのは、中年が全体像をつながりのある状態で見始める原因の一部である。これは、一部の脳が力を維持するために採用する適応戦略の1つかもしれない。若い頃は脳が比較的新しく、その必要がないので、わざわざ脳の両側を使ったり上位の脳領域を利用したりしないのかもしれない。
最近の研究では、この2つの脳を使うという技術に頼る人がもっとも有能だということがわかった。教育レベルが高いほど、年長者は前頭葉の領域を活用している可能性が高く、その結果記憶力も良い。
運動によって脳細胞が作られ、記憶力を強化する
全ての細胞と同じく、脳細胞にも酸素が必要で、血液がより多くの酸素を分配させるほど良いとされる。記憶に重要な領域である海馬の一部である「歯状回」は、エクササイズによって血流量が増え、新しい脳細胞を生み出す。定期的に行える、心拍数と血流を上げるエクササイズなら、ほとんど何でも新生ニューロンに活気を与えることができる。