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2018/02/21更新

欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)

141分

1P

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社会記号には人々の欲望の裏付けが欠かせない

社会記号には人々の隠された欲望が反映されている。「おひとりさま」という社会記号が定着するということは「他人に気を遣うより、自分が好きなように外食や旅行をしたっていいじゃない」という欲望が世の中に芽生えているということであり、「美魔女」という社会記号が定着するということは「アラフォーになっても自由に生きたい」という欲望が芽生えていることを表している。

こうした人々の心の中に眠る欲望の発見を、マーケティングの世界では「生活者インサイトの発見」という。隠された欲望であるインサイトを捉えることは、企画に携わる人にとって最も重要な作業だと言える。

人は自らの欲望を言語化できない

生活者のインサイトを発見することは、簡単なことではない。なぜなら自分の欲望に自覚的な人はそう多くはないからである。人間は自分の欲望を言語化することなく無自覚に日々を送っている。しかし、私たちはこれまで目にしたことがなかったものでも、それが目の前に出現すると、あたかも以前からそれが欲しかったかのように振る舞う。

自分の企画をヒットさせたければ、心の奥底にある「実はこれが欲しい」という無自覚な欲望に先回りして応えてあげることが欠かせない。しかし、人々に「何が欲しい?」と聞いても、明確な答えが得られる訳ではないので難しい。

欲望を言語化するための方法

人々が言語化できない欲望を発見し、具体的な言葉にするのを得意とする代表格が、雑誌の編集者である。雑誌が社会記号を生み出すことが得意なのは、ターゲットが特定の年齢や社会的属性に限られたメディアだからである。そのため、読者層に響く言葉であれば、普通の人が分からないような表現でも積極的に使っていく。そういう雑誌のメディアとしての独特なポジションが、多くの社会記号を輩出する場として機能してきた。最初は読者向けに開発された言葉が、他のメディアやネット上で引用されて広まっていくのである。

雑誌編集者は、読者がまだ気が付いていない欲望の発見のために、様々な試行錯誤を繰り返してきた。光文社の女性誌には「読調」と呼ばれる読者調査の仕組みがある。週に何回か読者に会い、直接会話し、誌面について率直な意見を聞きながら、読者の本音を探っていく。そのため、彼らのちょっとした変化を敏感に察知できる。そして、雑誌は、読者のインサイトを発見して、言語化し、社会記号として提案する。

ただ、ユーザーへの調査が重要だと言っても、一方的に質問し、答えてもらうだけでは本音を捉えるのは難しい。人の本音は「文句」に現れる。文句は欲望の裏返しのことが多い。もし、同じような文句を言う人が10人いたら、そこにはビジネスチャンスがあると考えていい。