異業種の成功モデルから学ぶことが、イノベーションの鍵となる。様々なビジネスモデルの事例を紹介しながら、新しい着想を得るためのヒントを与える一冊。
■戦略だけでは勝てない
戦略とは「誰(市場・顧客)に」「何(製品・サービス)を」提供するかを策定することだ。「どのように」は戦略を推進するための戦術であり、従来はトップ・マネジメント(経営者)ではなく、ミドル・マネジメント(中間管理職)の仕事であった。しかし、昔のようにトップが「誰に」「何を」という戦略を策定しているだけでは、異次元競争に勝ち残ることはできない。近年は、戦略に関する知識は容易に入手可能であり、誰もが同じ答え(戦略)に行き着く。そして数少ない有望市場に、様々な地域、業界、業種からクロスボーディングしてくる。
そこで「どのように」が重要となる。戦略が同じなら、どのようにという戦術と、それを完遂する現場の戦闘力が勝敗を決める。つまり、ミドル・マネジメントが担っていた戦術まで包括し、「誰に」「何を」「どのように」提供し、「どのように儲けるのか」まで一貫した仕組みでトップが担う。これが戦略とビジネスモデルの確信的な違いである。「どのように」という部分は、製品やサービスを生み出し、提供するまでの内部プロセスであるため外部から見えない。だから簡単に模倣できず、ブラックボックス化した真の強みとして差別化が可能になる。
自社に取り入れる学びは、遠ければ遠いほど難しくなる半面、成功すれば簡単に模倣されることはない。海外モデルからの学びは地理的な遠さがネックとなるが、遠いという意味では、異業界や異業種でも同じことが言える。つまり、異分野の事例は、イノベーションにとって最良の学びとなる。
著者 村上 幸一
タナベ経営 ビジネスモデルイノベーションコンサルティングチームリーダー VCの投資先ベンチャー企業において、マーケティング戦略構築やフィージビリティースタディー(事業化調査)などを経験。日系ベンチャーの海外進出から米国大学発ベンチャーの日本市場参入までグローバルな実績を有する。 タナベ経営入社後もその豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、多岐にわたって企業の成長と変革を支援。
帯 早稲田大学大学院商学研究科教授 井上 達彦 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 2分 | |
第1章 異次元競争の勃発―No Border(ノーボーダー) | p.11 | 12分 | |
第2章 「ビジネスモデル」と「イノベーション」 | p.29 | 18分 | |
第3章 ビジネスモデルイノベーション―マスターピース・セレクション | p.57 | 73分 | |
第4章 イノベーションを生み出す組織改革 | p.171 | 18分 | |
第5章 組織風土イノベーション―マスターピース・セレクション | p.199 | 22分 | |
第6章 ビジネスモデルイノベーションへの挑戦 | p.233 | 9分 | |
おわりに | p.247 | 2分 |
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