緩急のサイクル
負荷と緩急のサイクルは、次の段階を経る。
①鍛えたい筋肉や能力を選ぶ
②その筋肉または能力に負荷をかける
③回復するまで休息を取って、体を適応させる
④①〜③のプロセスを繰り返す。但し、前回よりもやや強い負荷をかける
負荷と休息のバランスが悪い人は、怪我をするか燃え尽きるか、あるいは自己満足して伸び悩むかのいずれかだろう。だが、負荷と休息をバランスよく取れる人は、勝者として君臨し続けることができる。
一流の人に共通する思考プロセス
ずば抜けた頭脳を持つ天才たちは、並々ならない集中力で仕事に取り組み、それ以外の時はひたすら休養と疲労回復に努めている。緩急をつけることで、創造力の消耗や脳の疲労を予防できるだけでなく、革新的な発想や世紀の大発見も可能になる。どんな分野であれ偉大な知識人や創造力豊かな人々には、以下の共通するプロセスが見られる。
①没頭:高い集中力を発揮しながらひたすら仕事に没頭する
②熟成:休息と疲労回復のための時間。仕事のことは一切考えない
③ひらめき:新しいアイデアが湧いたり、考えが深まったりする
頭脳や創造力に秀でた天才たちが思考力を磨くためにやっていることは、身体能力に秀でたアスリートたちが体を鍛えるためにやっていることと同じだ。人間は誘惑に抵抗したり、物事を深く考えたり、強く集中したりするたびに、同じことが前よりもうまくできるようになる。最新の研究では、意志力も小さな成長を積み重ねることで鍛えられ、やがて大きく成長すると言われている。結局、行き着くのは「負荷+休息=成長」という原点なのである。
「無理かもしれない」が成長のシグナル
上達させたいスキルが何であれ、負荷をポジティブなものだと考えること。強すぎる負荷や果てしなく続く負荷は危険だが、適度な負荷は強力な刺激剤となって成長を後押ししてくれる。
成長のためにはどの程度の負荷が必要か。何かを始める時に、やや自分の手にあまりそうだが、不安で一杯になることも、ひどく警戒することもないタスク「かろうじて手が届く挑戦」が最適な負荷だ。自分のスキルを少し上回るタスクが来たら絶好のチャンスだ。頭の中で「無理かもしれない」という声が聞こえたら、それは正しい道に立っていると考えていい。
トップパフォーマーは熱心に「かろうじて手が届く挑戦」を探し出し、目標を立てて、ほんの少し背伸びが必要な練習メニューを組む。さらに彼らは深く集中しながら「意図的な練習」を行なっている。トップレベルの人が真剣に仕事に取り組む時は、心も体も100%その仕事に集中する。彼らは全身全霊でその瞬間と向き合う。つまり、負荷のかかる1つのタスクに集中して取り組むことで人間は成長する。