フィナンシャル・タイムズの元東京副支局長が、グローバル社会で必要とされる心構えを紹介している一冊。日本人の常識が必ずしも世界で通用するとは限らない説きます。
■グローバル社会で重要なのはコミュニケーション能力
日本社会は、とても寛容である。酔っ払って、様々な迷惑をかける人が罰せられることはないし、授業をサボり、テストの点数が低い大学生でも卒業できる。一流企業では一生懸命に仕事をしなくても、会社の業績が安定していれば、それに合わせて収入が上がっていく人も大勢いる。
日本では、グローバル社会では通用しないことも特に問題にならず、許容される傾向がある。日本では普通に受け入れられていることが、必ずしも世界の常識ではない。
そして、一番の問題は「コミュニケーション能力の欠如」である。様々な文化の人たちが交流するグローバル社会で重要なのは、それらの違いを理解し、尊重することだが、そのために欠かせないのは効果的なコミュニケーションである。しかし、異文化が混在するグローバル社会で活躍するために必要とされるコミュニケーションやその他のスキルに関して、寛容な日本の社会の中では求められない。多くの日本人はそのことに気づかないまま、グローバル社会から取り残されるリスクがある。
■沈黙は不気味
外資系企業や外国人経営者、欧米の学者の多くが、日本人とのやりとりの中で、最も戸惑いを感じると指摘するのは「日本人は喋らない」ということである。日本人にとっては英語でのコミュニケーションの難しさもあるが、欧米人には何も言わずにただニコニコしている人は「何を考えているかわからない」とうつるので、本当に意味がわからないのである。
何も言わない、発言しない、説明しない傾向と同様に、日本人が好む曖昧な表現も、誤解や不信感につながる危険性がある。特に、日本人がネガティブなことをはっきり言うのを嫌う傾向は、相手に対する気遣いからだが、それはかえって大きな誤解を招くことがある。
著者 中元 三千代
1957年生まれ。ジャーナリスト ユネスコ・アジア文化センター勤務などの後、1988年からFT(フィナンシャル・タイムズ)東京特派員に。1990年ロンドン本社に勤務、1993年より東京支局にて特派員、2006年より東京支局副支局長に。 2013年フリーランスジャーナリストに。世界の金融界、ビジネス界、通商問題、政治、外交、芸術分野まで幅広く取材。また同時に世界で活躍する多くの日本人ビジネスマンや政治家、学者、芸術家の生の声を聞いてきた。
帯 クオンタムリープCEO 出井 伸之 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 5分 | |
序 章 不思議の国、日本―世界は日本をどのように報じてきたか? | p.19 | 16分 | |
第1章 会話する力 「しゃべる」が勝ち―世界のエリートは「個人的な話」をビジネスの場でする | p.47 | 18分 | |
第2章 伝える力 「メッセージ」は何?―伝えるのは「事実」だけでは物足りない | p.79 | 18分 | |
第3章 自信 自信がなくてもある「ふり」をしよう―「正直者」は世界の競争に負ける | p.111 | 16分 | |
第4章 売り込む力 自己PRを「さらり」としよう―待っていても、誰もあなたを売り込んでくれない | p.139 | 16分 | |
第5章 誇る力 「ひかえめ」で得することは何もない―謙遜は、美徳とは限らない | p.167 | 15分 | |
第6章 コミュニケーション欠如の弊害―このままでいると失われるもの | p.193 | 17分 | |
終 章 小さな1歩で、大きく変わる―その具体的解決法 | p.223 | 16分 | |
おわりに | p.250 | 2分 |
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