マイクロソフトの存在理由は何か
マイクロソフトのそもそものルーツ、当初の存在理由は、誰もがコンピューターを使えるようにすることにあった。「すべてのデスク、すべての家庭に1台のコンピューターを」が元々のミッションであり、それを軸に企業文化が形成されていった。しかし、今や世界は大きく変わり、大抵の職場や家庭にはコンピューターがあり、大半の人がスマートフォンを持つ時代になった。
パソコンの売り上げは鈍化し、モバイルでは大きな後れを取った。ネット検索でも開発が遅れ、ゲームでも伸び悩んでいた。漠然としていてまだ満たされていない顧客ニーズに対して、これまで以上に深く感情移入しなければならない。「リフレッシュ」ボタンを押すべき時期だった。
「マイクロソフトの存在理由は何か? この新たな役職での私の存在理由は何か?」これはあらゆる組織のあらゆる人間が自らに問うべきことだ。
新たなミッション
マイクロソフトは、あらゆる人、あらゆる組織に力強いテクノロジーを提供する企業、テクノロジーを世間一般に広める企業だという魂を取り戻す必要がある。
私たちはもはや、パソコン中心の世界にはいない。コンピューターが至るところに存在する世界、あたり一面に知能が存在する世界に変わろうとしている。これはつまり、コンピューターが周囲を観察し、データを収集し、そこから知見を得られるようになるということだ。生活や仕事どころか、世界のデジタル化がかつてないほど進んでいる。ますますネットワーク化するデバイス、クラウドによる驚くべきコンピューター処理能力、ビッグデータからの知見、機械学習による知能が、それを支えている。これらすべてをまとめて、マイクロソフトは「モバイルファースト、クラウドファースト」にならなければならないと主張した。
私たちが思い描くべき世界とは、デバイスに縛られないモバイルな人間経験が重視され、クラウドがそれを可能にし、新世代の知的経験を生み出す世界である。マイクロソフトがあらゆる事業を通じて展開していく変革は、マイクロソフトやその顧客が、この新たな世界で成長・発展するのを支援するものでなければならない。
マイクロソフトは、人間経験をモバイル(移動可能)なものと捉え、その理念をクラウド・テクノロジーで実現していこうと考えた。このモバイルとクラウドという2つのトレンドが、変革の基盤となった。
CEOの仕事とは
CEOのCは「culture(文化)のCだ。CEOは企業文化の管理人だ。顧客や社員の声に耳を傾け、学び、個々の情熱や才能をミッションに生かす文化があれば、その企業は何でもできる。