デジタル技術の発達によって、ヘルスケア業界に変革の波が押し寄せつつある。従来のビジネスモデルから、患者へのアプトプットを重視した新しいビジネスモデルへの転換を紹介しながら、次世代の経営戦略について書かれています。
■ヘルスケア産業激変の背景
医療業界は立ち遅れ、かつてない課題に直面しているかもしれないが、追い風となるプラス材料もある。その1つは、高齢化や慢性疾患の増加に伴い、多くの市場で「健康志向」が高まっていることだ。企業にとっては、健康や福祉を増進する消費者向けの商品・サービスを開発・販売するチャンスである。
こうした商品・サービスには、変革の鍵となるデジタルの力が用いられるようになっている。例えば、ウェアラブルデバイスや携帯電話に内蔵されたテクノロジーを使えば、これまでになかった方法で健康データを追跡・保存できる。その結果、そうしたデバイスやエコシステムの作り手は、医療システムを患者にどんぴしゃで届けられるようになった。患者に対する理解や患者とのやり取りの方法が変わり、医療は一般消費財市場の様相を呈するようになる。
他にも、電子カルテや個人ゲノム情報からライフスタイルデータ、個人健康データまで、各種のデジタルデータを分析することで、今までに類を見ない知見が得られ、新薬や治験サービスの開発が飛躍的に進歩する。
今日では、事業環境が大きく変わり、基本となる指標がボリュームからバリューへ移行している。したがって競争相手との差別化の源泉も、大量生産から、より重層的な環境へとシフトしている。そこでは以下のような差別化要因を持つビジネスモデルが主流となる。
・市販薬(OTC)やジェネリック医薬品の場合は、純粋な価格
・製品イノベーション(例:遺伝子変異や疾病の病態生理によって特定可能な患者に届ける、専門性の高い医療)がもたらすアウトカム
・製品とサービスの組み合わせ(例:患者重視の機器、製品、サービスによる統合治療ー既存医療の欠陥を補い、在宅などの遠隔期に医療機関の治療を補う)がもたらすアウトカム
・サービス(例:医薬品と一体的にアウトカムや生活様式を変えるテクノロジー主導企業、データや機能の活用に革命を起こすデジタル専業企業)がもたらすアウトカム
著者 アン・オリオーダン
アクセンチュア・ライフサイエンス グローバル・インダストリー・シニア・マネジング・ディレクター 製品ビジネスのオペレーティング・ボードメンバー。四半世紀にわたってヨーロッパ全域、米国、アジアで勤務し、製薬企業や医療テクノロジー企業、コンシューマーヘルス企業の事業再編、患者アウトカムの改善をサポートしてきた。2007年からは中国が本拠。ライフサイエンス産業に関する数々の論考を発表している。
著者 ジェフ・エルトンアクセンチュア・ストラテジー マネジング・ディレクター プレディクティブ・ヘルス・インテリジェンスおよび患者パスウェイ分野のグローバルリード。いくつかのヘルスケア関連企業の創業者、取締役でもある。 医療のイノベーション、分析および価値をテーマにした著述も多い。マサチューセッツ・バイオテクノロジー協議会の役員。最近はボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネスの健康管理プログラムで講師を務める。
帯 アステラス製薬 代表取締役副社長 安川 健司 |
帯2 エーザイ 代表執行役 林 秀樹 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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日本語版特別章 激変前夜、日本のヘルスケアビジネスへの提言と処方箋 | p.30 | 29分 | |
第1章 ヘルスケア産業激変の背景 | p.74 | 18分 | |
第2章 避けられない戦略的選択 | p.100 | 22分 | |
第3章 旧モデルと新モデル | p.132 | 17分 | |
第4章 リーンイノベーター | p.157 | 19分 | |
第5章 患者サービスイノベーター | p.185 | 26分 | |
第6章 バリューイノベーター | p.223 | 19分 | |
第7章 新デジタル医療企業 | p.251 | 19分 | |
第8章 協働と競争の新モデル | p.280 | 20分 | |
第9章 ヘルスケア・エコシステムの人材戦略 | p.310 | 12分 | |
第10章 ヘルスケア新時代 ―中心は患者と価値 | p.328 | 11分 |