京都大学のデザイン学教授が、物事を深く考えることについて語った一冊。何事もすぐに答えを見つけることが良いとされる現代において、物事を深く考え、ユニークな考えを導くことにこそ大切であると説いています。
■「深く考える」とは
「深く考える」とは「プロセス」であり、必ずしも「最適解」を出すことではない。深く考えれば考えるほど、あれやこれやと様々な要素が入ってくる。答えとは別に「深く考える」ことそのもので生み出される「何か」はあるはずで、これからの時代はそんな思考のプロセスにこそ「真の問題」や「新たな解決法」が隠れていて、価値もある。
「考える」という営みは「recognition=認識」だ。つまり「目の前のものは、すでに自分の中にある概念と同じだ」と認識・確認する作業が、一般的に私たちがしている「考える」作業のほとんどだ。これは目の前のことと、自分の知識の答え合わせみたいなものだ。だから、「考える」だけなら時間はかからない反面、新しい着想は生まれにくい。
一方「深く考える」とは、例えば未知なるものを目にした時、それは何かを、考えて考えて考え抜いた末に、全く新しい概念が自分の中に形作られることだ。また、既知のものであっても、新たな面を見ようと思案する道筋そのものが「深い思考」となり、それによって発想の転換も促される。
■深く考えられることに価値がある
頭が良いとは「深く考えられる」こと。頭の良さは、点数では測れない。なぜなら「深く考える」という営みは決して数値化できないものだからだ。点を取るには大量の知識をインプットする「勉強」が必要で、深く考えていたらその効率は下がる。「本当か?」と深堀りしている時間があるなら、問題集の答えや解法を鵜呑みにして量を稼ぐ方が得策だ。結果として、「深く考える」ことがおろそかになってしまいがちである。
だが、仕事の上でも生きていく上でも、役に立つのは「深く考える力」である。「深く考えられる」という「本当の頭の良さ」が最高の強みになるのだ。
深く考える力をつけるためには、深く考えるしかない。考える力をつけるには、考える時間をつくること。必要なのは「考えることの価値を知る」ことだ。だから少し立ち止まってみよう。
著者 川上浩司
1964年生まれ。京都大学デザイン学ユニット特定教授 専門はシステムデザイン。京都大学工学部在学中に人工知能(AI)など「知識情報処理」について研究し、同修士課程修了後、岡山大学で助手を務めながら博士号を取得。 その後、京都大学へ戻った際、恩師からの「これからは不便益の時代」の一言がきっかけで「不便がもたらす益=不便益」について本格的に研究を開始する。 不便益研究の一環として作成した「素数ものさし」(目盛りに素数のみが印字されたものさし)は、その特異性から話題を呼び、京都大学内のみでの発売にもかかわらず、3万本以上の販売を記録している。 自動化が進み、とにかくより便利な方向へと進む時代の中、便利になったがゆえの弊害を工学的にアプローチして解決するため、「不便益」という視点から新たなシステムデザインの研究・作成に日々取り組んでいる。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊ダイヤモンド 2017年 12/9 号 [雑誌] (読んだら入りたくなる温泉) 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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Introduction | p.3 | 7分 | |
第0章 DEEP THINKINGの極意 | p.23 | 12分 | |
第1章 なぜ「鉛筆で記す人」は「できる人」っぽいのか? | p.43 | 24分 | |
第2章 「わかりやすい説明」に数字は要らない | p.85 | 22分 | |
第3章 鉛筆を持つ者だけが「たどる力」を手に入れる | p.123 | 22分 | |
第4章 「必要なもの」を抜く1本の勇気 | p.161 | 21分 |