現在活用されているAIは人間に使われることが想定されている
今、AIと呼ばれているサービスの共通点は、すべて特定の機能に特化していることだ。例えば、「アルファ碁」はプロ棋士にさえ勝つことができるが、資金の運用はできないし、コールセンター業務をこなすこともできない。このような、現在活用されはじめているAIを「弱いAI」と言う。汎用的な能力を持つ強いAIに対して、その能力を非常に限られた分野にしか発揮できない。これは「人に使われることが想定されているAI」だ。昨今のAIはパワフルになってきているが、これまで私たちを労働から解放してきた様々な道具の延長線上にあるものにすぎない。
人間の雇用にダイレクトにインパクトがありそうな汎用人工知能(強いAI)は、まだ黎明期のさらに最初の方で、主流の採用まで10年以上の時間がある。少なくとも、直接私たちの仕事が奪われると言う懸念はしなくても良さそうだ。
今のAIで消滅するのは個別の作業だけ
どの仕事においても、必要なのは以下のような作業である。
①(人の)管理業務:9%
②自分の専門分野の技術を必要とする(本来の)仕事:18%
③関係者とのコミュニケーション:20%
④予期外の作業:25%
⑤情報収集:64%
⑥収集した情報の処理や加工:69%
⑦予想可能な作業:78%
どの作業にどれだけの時間を割くのかは職種によっても変わるし、職場におけるポジションによっても異なるが、これらの作業が自動化される可能性は上記のように算出されている。つまり、情報収集や調査、集めた情報の処理が一番自動化されやすいと考えられている。
但し、最も自動化の確率が高い業務でも、100%が置き換わる訳ではない。仕事における作業をどのくらい自動化できるかは人によって差はあるが、案外、今のAIではあなたの仕事を完全に置き換えるのは難しい。
AIを使うためのリテラシーを身につけよ
どんなに頭のいいAIのサービスでも、その仕事に対して適切な答えを出しているのか、適切な提案をしているのかを判断するための人間担当者が必要で、そのためにはその分野の専門知識が必要だ。だから、システムを使いこなすリテラシーと共に、その分野の専門知識も引き続き求められる。
機械にせよITにせよ、どんなに素晴らしいものでも究極的に面倒を見て責任を負うのは人間だ。現在のITツールは、人間がその使い方を習得してはじめて真価を発揮するものだ。そうなると、IT化、AI化の進行は求められる人と求められない人の分断を生む可能性もある。個人としてできるのは、時代に合わせたスキルや知識を身につけて、成果を出すのを目指すことだ。