「AIが人間の仕事を奪う」という懸念が広がっているが、人間のように様々な問題に対応できる「強いAI」が登場するのはまだ先である。これからはツールとしてAIを使うリテラシーを身につけることが大切であると説く。
■人間よりもAIのコストが安くなると
人間の職業がAIに奪われてしまうのではないかという懸念が様々なメディアを賑わせている。専門家によってはあと120年の内に、場合によってはもっと早く、現在の全人類が持っているすべての仕事はAIに奪われると予測している。
今の資本主義の世界においては、多くの労働者は、自分の労働力を商品として資本家に売る。資本家にとっては労働者は生産手段の1つにすぎない。生産手段の1つとして雇った従業員が、予定した通りパフォーマンスを発揮してくれないと、資本家は別の従業員を雇うことになる。資本家にとってみれば、同じ結果が得られるのであれば、コストが安いに越したことはない。
「単純」「繰り返し」「大量処理」は、元々コンピュータが得意とするところだ。そこにAIのような、より主体的に考えることのできる存在が導入されれば、間違いなくその仕事に適応することができる。そして、人間のコストは上昇傾向にあり、AIのコストは下降傾向にある。今後はAIの能力とコストパフォーマンスが人間を上回った職種から置き換えが進むと考えるのは荒唐無稽な話ではない。
現在使用されている、あるいは近い将来開発されるであろうシステムは弱いAIで、特定の限られた機能については圧倒的に強力な力を持つが、人間が普段やっている仕事を総合的にこなすことはできない。
現在の延長線上のAIでは、これらの強力な機能をまとめ上げて使う人間という存在が必要だ。つまり、現在のところ、私たちの身近にあるAIは人間が使用することを想定しているため、人間そのものを排除することが難しい。従って、この5年や10年で人間そのものが大半の職場からいらなくなってしまうと考えるのは荒唐無稽だ。
著者 水野 操
1967年生まれ。有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役 一般社団法人3Dデータを活用する会(3D‐GAN)理事。 1990年代のはじめから、CAD/CAE/PLMの業界に携わり、大手PLMベンダーや外資系コンサルティング会社で製造業の支援に従事。 2004年にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを設立後は、独自製品の開発の他、3Dデータを活用したビジネスの立ち上げ支援やCAD/CAM/CAE/PLMツールや3Dプリンターの導入支援も積極的に行う。
帯 作家 佐藤 優 |
週刊ダイヤモンド 2017年 12/16 号 [雑誌] (バブル相場の勝ち抜け方) |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 6分 | |
第1章 今あるのは人間と協業する「弱いAI」にすぎない | p.21 | 10分 | |
第2章 「人間であること」のメリットを生かすには | p.39 | 10分 | |
第3章 職業分野別、AI時代の生き残り方のヒント | p.58 | 39分 | |
第4章 企業とテクノロジー、組織と個人の関係について | p.130 | 11分 | |
第5章 AIに対する自分の耐性をチェックする | p.150 | 16分 | |
第6章 AI時代に未来をつくる働き方のモデル | p.179 | 9分 | |
おわりに | p.195 | 1分 |
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