相手を知り、自分を知ることで勝利をひきよせる。元ヤクルトスワローズのプロ野球選手だった著者が、あらゆる仕事にも通じる、成果を出すための考え方を紹介している一冊。
■勝負を懸けて選択したのなら、失敗しても仕方がない
プロ野球界で一番、頭が良いと感じた選手は誰かと聞かれたとするなら、一緒にプレーした中では古田敦也さんの名前を挙げる。野手全員で盗塁の練習をする機会があった。投手も盗塁を仕掛けてくることがわかっているから、素早いクイックモーションで投げる。当然、投手が投げ始めてからスタートを切っても、二塁でアウトになってしまう。
古田さんの考え方は違った。真面目にスタートをしても良い結果が出ないのなら、投手が動き始める前にスタートをしてみればいい。もちろん、牽制でアウトになって首脳陣に叱られるリスクだってある。だが、勝負を懸けて選択したのなら、たとえ失敗しても仕方がない。セオリー通りにプレーすることが、常に正解とは限らない。現役時代の古田さんのプレーは遊び心に溢れていた。球界の常識を疑ってかかるような探究心には、驚かされることが多かった。古田さんがよく口にしていたのが「最後は命を取られるわけじゃない」という言葉だった。
■臆病であることが成果につながる
どんな仕事であれ、臆病な性格の要素を持った人材の方が注意を払って事前の準備や事後のチェックをすることができる。臆病であることは、考え続けられるということでもある。技術を磨く上では「ビビり」な性格は必要な要素である。そして、繊細であり続けることが大胆さにつながる。一流と呼ばれる選手には繊細さと大胆さのバランスの取り方がうまい選手が多い。
■上達に近道なんてない
上達に近道なんてない。ほとんどの人が、できるだけ無駄を省いて合理的に物事を運ぼうと考える。誰だって回り道はしたくないし、努力は最小限に抑えて良い結果につなげたいものだ。ところが、合理性ばかりを求めていると、弊害が出るケースが多い。
19年間の現役生活を経験した中で。1つ言えることがある。物事の結果をコントロールすることはできないが、プロセスはコントロールすることができるということである。相手がある以上、結果に至るまでの準備までしか、自分ではコントロールすることができない。言い換えれば、大切なのは結果ではなく、どういった準備をしたかというプロセスだとも言える。
こうしたプロセスを重視して取り組んでいくと、無駄なことがたくさん出てくる。この一見無駄に見えることが、必ずしも無益だとは限らない。失敗を重ねる中で、当時の考え方は正しくなかったのだと反省したり、アプローチの仕方を変えて見ようという新しい発想が生まれることもある。結局は無駄なことを経験してきたからこそ、次からは無駄を省けるようになる。無駄なことが、無駄だと気づくことができる。無駄を重ねることが、本当の力を身につけることにつながる。
著者 宮本 慎也
1970年生まれ。元プロ野球選手 PL学園高校、同志社大学、プリンスホテルを経て1995年にヤクルトスワローズ入団。2004年アテネ五輪、2008年北京五輪の2度の五輪で野球日本代表のキャプテン、プロ野球選手会会長を務める。 WBC優勝チームのメンバー。2012年2000本安打と400犠打を達成(通算2133安打、408犠打)。ゴールデングラブ賞10回受賞の守備の達人でもある。 2013年に引退後はNHKの解説者、日刊スポーツ野球評論家、少年野球大会主催、雑誌連載、講演会活動など多方面で活躍。
帯 元プロ野球監督 野村 克也 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 一流 一流と二流をわけるもの | p.17 | 21分 | |
第2章 プロ プロフェッショナルの仕事とは | p.51 | 24分 | |
第3章 変化 変化を続けられた者だけが生き残る | p.91 | 13分 | |
第4章 成長 成長する人、しない人の小さな違い | p.113 | 34分 | |
第5章 役割 自分の役割を見つけ、果たす | p.169 | 13分 | |
第6章 指導 結果を出す指導者の言動 | p.191 | 23分 | |
第7章 組織 勝つ組織の必然性 | p.229 | 9分 |
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