マーケティングの定義
マーケティングは売ることではなく、売らなくても売れるようにすることである。マーケティングは商品ありきではなく、顧客ありき。事業の定義も、商品中心ではなく顧客中心に考えなくてはならない。顧客が買うのは商品ではなく、商品のもたらす恩恵の期待、問題解決である。顧客が実際に買っているのは商品だけではなく、商品を包み込んだサービスである。
売れる仕組みをつくることは、明らかに売ること、すなわちセリングとは違う。売る仕組みではなく売れる仕組みをつくるためには、はじめに顧客ありきで考えないわけにはいかない。売れる仕組みだから、売る組織だけでなく、すべての組織が関わってくる。売れれば利益は後からついてくる。
管理マーケティングの体系
コトラーがつくりあげた管理マーケティングの体型は、次の通り。
①R:市場調査
↓
②S:市場細分化
③T:ターゲティング
④P:ポジショニング
↓
⑤4P(商品、価格、流通、販促)
↓
⑥I:実行
⑦C:統制
分析を重ね計画を練り上げて、あとはその通りにきちんと実行しさえすれば、マーケティングはうまくいく、というのが管理マーケティングの考え方である。しかし、これだけを学んでも、現場の実践では役に立たない。
マーケティングの対象
マーケティングの対象は、3つの次元からなる。
①戦略と戦術
②計画と実行
③結果と過程
これら3つの次元は、第1、第2、第3の順に、より具体的なレベルの内容のレベルになっている。管理マーケティングは、これら3つの次元において、もっぱら戦略・計画・結果を重視し、戦術・実行・過程を切り捨ててきた。しかし、この戦術・実行・過程という最前線の現場こそが、顧客との接点であり「真実の瞬間」を生み出している。このことが管理マーケティングが現実よ乖離し、現場の実践では役に立たない原因となっている。
人間は意識と理性だけで動くわけではない
マーケティングを現場で実践して成果をあげるためには、人間についての考え方を新しく捉える必要がある。管理マーケティングでは、人間についてもっぱら意識と理性だけしか念頭にない。しかし、生身の人間は、知らず知らずに自動的に反応し、好き嫌いでも判断し、人によって認識する世界も異なり、それは時と所によって変わる。つまり、人間について①無意識、②感情、③主観性・身体性、④状況・文脈・環境という4つの要素を考慮する必要がある。
人は、検討することを動機付けられており、かつ検討する能力がある場合、内容そのものを慎重に検討し判断する。いずれかが欠ける場合(価格の安い日用品を買う時や、検討している時間がないテレビCMなど)には単純な手がかりをもとに判断する。このことを念頭において行動することが大切である。