インテルの元CEOが、劇的な競争環境の変化に対して、企業はどのように対処していくべきかを経験をもとに紹介している一冊。企業経営において、小さな変化を見逃さないことが大切であると説いています。
■パラノイア(病的なまでの心配症)だけが生き残る
ビジネスの世界において、パラノイアでいることには十分な価値がある。事業の成功の陰には、必ず崩壊の種が存在する。成功すればするほどその事業のうま味を味わおうとする人々が群がり、次々に食い荒らし、最後には何も残らない。だからこそ、経営者の最も重要な責務は、常に外部からの攻撃に備えることであり、そうした防御の姿勢を自分の部下に繰り返し教え込むことだ。
パラノイアのように神経質になってしまうことは色々ある。製品に問題がないか、発売時期を誤ったのではないか、工場は計画通りに稼働しているか、工場の数が多すぎはしないか、適任者を採用しているか、士気が落ちていないか。もちろん競合企業の動きも気になる。しかし、こうした懸念も、戦略転換点と呼んでいるものに比べれば大したことはない。
戦略転換点とは、様々な力のバランスが変化し、これまでの構造、これまでの経営手法、これまでの競争の方法が、新たなものへと移行していく点である。戦略転換点を迎えるまでの産業は旧来通りに見えるが、一旦転換点を通過すると新しい形に変貌する。
いつ戦略転換点が来るのかを正確に示すことは難しい。戦略転換点はいくつかの段階を経て明らかになってくる。最初に、何かが違うという不安感がある。物事が以前のようにうまくいかなくなり、顧客の態度も違ってくる。今まで成功してきた開発グループも、売れる商品を作れなくなる。これまで気にもとめていなかった競合企業や、存在さえ知らなかった企業が、自分たちのシェアを奪い始める。
次の段階では、企業が取り組んでいるはずのことと、実際に内部で起きていることとのずれが次第に大きくなっていく。こうした企業方針と行動の不一致が、今まで経験してきた混乱とは違うものだということの暗示なのだ。
やがて、新しい枠組み、新しい考え方、新しい動きが生まれてくる。最後には、新しい経営方針が生まれるが、それを生むのは新たな経営陣であることが多い。
形のない転換点を相手に、企業を救うための適切な処置を講じるタイミングを知る方法はない。自分の直感力を磨き、様々なシグナルを感知できるようにする以外にない。
1936年生まれ。インテル 元CEO インテル社の創設に参画し、第1号の社員となる。1979年社長に就任。1997年にはタイム誌の今年の人に選ばれた。 1998年にはインテルのCEOを辞任し、2004年には会長から退いた。スタンフォード大学経営大学院で24年にわたって指導した。
TOPPOINT |
日経ビジネス マネーフォワード社長CEO 辻 庸介 |
帯 アップル 元CEO スティーブ・ジョブズ |
帯2 経営学者 ピーター・ドラッカー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 パラノイアだけが生き残る | p.15 | 6分 | |
第1章 何かが変わった | p.23 | 14分 | |
第2章 「10X」の変化 | p.41 | 9分 | |
第3章 コンピューター業界の変貌 | p.53 | 15分 | |
第4章 それは、どこにでも起こる | p.73 | 24分 | |
第5章 われわれの手でやろうじゃないか? | p.105 | 18分 | |
第6章 「シグナル」か、「ノイズ」か | p.129 | 21分 | |
第7章 カオスに支配させよう | p.157 | 14分 | |
第8章 カオスの手綱をとる | p.175 | 26分 | |
第9章 インターネットはノイズか、シグナルか | p.209 | 18分 | |
第10章 キャリア転換点 | p.233 | 11分 |