経済成長は、生活の苦悩から人間を救い出す役割を担う宗教のような存在となった。しかし、経済成長は持続的ではない。経済成長という考え方を問い直し、これからの現代社会が向かうべき方向を考えさせる一冊。
■経済成長という宗教の崩壊
現代の宗教とも言える経済成長は、人々の衝突を和らげ、無限の進歩を約束する妙薬だ。人々は自分にはないものを欲しがる。そのような人々の暮らしにおけるありふれた惨事を解決してくれるのが経済成長だ。ところが少なくとも西洋諸国では経済成長は断続的で儚いものにすぎない。
経済は限りなく成長するという約束が当てにならないものになるのなら、社会は一体どうなるのか、人々は経済成長以外に自分たちを満足させられるものを見つけられるのか、それとも人々の間に失望と暴力が蔓延するようになるのか。
経済成長が途絶える時、進歩という理想は失われるだろう。我々の祖先は、神という望徳が失われるのなら、人生に生きる価値はあるのだろうかと自問した。そして今日の問いは、物質的に豊かになる保証がないのなら、我々の人生は陰鬱で無味乾燥なものになるのではないか、ということである。
現代社会は、経済成長なしでも持続できるのか。現代社会の職場が個人に課す重圧や個人の妬みを考慮すれば、答えはノーだ。経済は再び成長するだろうか。歴史を振り返り、環境問題という将来的な制約を考慮すれば、これも期待できない。要するに西洋社会は、怒りと暴力にまみれるという結論は避けがたい。
著者 ダニエル・コーエン
1953年生まれ。パリ高等師範学校経済学部長 パリ経済学校教授 『ル・モンド』論説委員 パリ第1大学(パンテオン・ソルボンヌ)、および、パリ高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)の経済学教授を兼任する。専門は、国家債務と金融経済史。 2006年には、経済学者トマ・ピケティらとパリ経済学校(EEP)を設立。元副学長であり、現在も教授を務めている。専門は国家債務であり、経済政策の実務家としても活躍している。
帯 法政大学教授 水野 和夫 |
週刊東洋経済 2017年11/11号 [雑誌](薬局の正体 膨張する利権と薬学部バブル) 北海道大学経済学研究院教授 橋本 努 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 論 経済成長なき進歩はありうるのか | p.5 | 6分 | |
第1部 経済成長の源泉 | p.21 | 37分 | |
第2部 未来だ、未来だ | p.83 | 29分 | |
第3部 進歩を再考する | p.131 | 41分 | |
結 論 トライアングル地獄からの脱出と超越 | p.199 | 2分 |
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