現役の将棋名人を超えたコンピュタ将棋「ポナンザ」の開発者が、将棋コンピュータがどのような仕組みで強くなっていったかを紹介しながら、人工知能の仕組みを解説している一冊。
■プロ棋士の対局を記憶するだけでは勝てない
コンピュータは、多様な機能を持つように見えるが、本質的にできることは「簡単な計算」と「記憶」の2つだけである。この特徴を持つコンピュータは、将棋というゲームにどう立ち向かえばよいのか。
記録として残っている、すべてのプロ棋士の対局を覚えれば強くなれる訳ではない。プロ棋士の対局の経過をすべて覚えることは、10年前のコンピュータにとっても難しいことではなかった。しかし、どれだけ過去の棋譜を記憶しても、コンピュータは将棋で人間に勝てなかった。
いくら過去の場面を覚えたとしても、将棋のような複雑なゲームでは、対局する中で必ず未知の場面が出てくる。そうなると、いくら記憶力があっても役に立たない。その場に即した適切な判断ができる知能が必要である。
10年ほど前、機械学習を導入し始めた頃のコンピュータ将棋について、あるプロ棋士は「プロに勝てるようになるには、50年ほどかかるだろう」と言った。そもそも人工知能は最初、アマチュアレベルにも到達しないようなところからスタートした。しかし、ポナンザは、そこから指数的に成長し、今まさにトッププロをも抜き去ろうとしている。
予想もできなかったスピードとタイミングで人工知能に抜き去られる。将棋のプロと同じ経験を、これからは社会の様々な分野で、多くの人がするはずである。
著者 山本 一成
1985年生まれ。将棋プログラマー プロ棋士に初めて勝利した現在最強の将棋プログラム「ポナンザ」作者。 主要なコンピュータ将棋大会を4連覇中。 愛知学院大学特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、HEROZ リードエンジニア。
![]() 作家 瀬名 秀明 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 2分 | ![]() |
第1章 将棋の機械学習――プログラマからの卒業 | p.11 | 35分 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
第2章 黒魔術とディープラーニング――科学からの卒業 | p.77 | 18分 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
第3章 囲碁と強化学習――天才からの卒業 | p.111 | 31分 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
第4章 倫理観と人工知能――人間からの卒業 | p.169 | 17分 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
おわりに | p.201 | 4分 | ![]() ![]() ![]() |
巻末付録 グーグルの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか? | p.209 | 41分 | ![]() ![]() ![]() |