『キャズム』の著者が、破壊的変化の時代に生き残るためのマネジメント手法を紹介している一冊。
■プライオリティの危機
現代のビジネスを特徴付ける要素は、スピードと破壊的変化だ。次から次へと登場する次世代テクノロジーの波がビジネスの地平を継続的に変化させている。この結果、地位を確立した企業にとって2つの緊急課題が生じる。自社が破壊的変化を起こしたいと考えている市場では「次の波を捕まえる」ことが必要だ。同時に自社が既得権を得ており他社からの破壊的変化にさらされている市場では、防御側として動き「次の波が自社を捕まえることを防ぐ」ことが必要だ。いずれの場合でも企業は「プライオリティ(優先順位)の危機」を経験することになる。トップ中のトップ企業でない限り、この危機を回避するのは難しい。
他社のビジネスに破壊的変化をもたらすためには、自社のポートフォリオに新しいビジネスラインを追加しなければならない。しかし、ここにプライオリティの危機が生まれる。取り組みを始めるのはたやすいが、先に進むに連れて十分な経営資源がないことが明らかになっている。いかなる先進カテゴリーにおいてもマーケティング、セールス、サービス、パートナー提携は極めて非効率的なプロセスになる。これは特に既存のビジネスラインと比較すれば明らかだ。
戦略的な事業ポートフォリオマネジメントを実施する上では、「ゾーンマネジメント」によって、経営資源を適切に活用する必要がある。地位を確立した企業が、既存ビジネスを維持しつつ新たなビジネスラインに乗り出し、既存ビジネスに対する破壊的変化による攻撃も避けることができるようになるには、事業を次の4つのゾーンに分離して、それぞれ別の手法を持って運営していく必要がある。
①パフォーマンスゾーン(持続的イノベーション×収益パフォーマンス)
既存事業で成果を出す。(ライン部門)
②プロダクティビティゾーン(持続的イノベーション×支援型投資)
生産性を上げる。(スタッフ部門)
③トランスフォーメーションゾーン(破壊的イノベーション×収益パフォーマンス)
④インキュベーションゾーン(破壊的イノベーション×支援型投資)
新規事業を育む。(R&D、事業開発部門)
破壊的変化の波に直面した時、それが機会であれ、脅威であれ、現状の経営規範は有効ではない。この状況を改善するためには、以下の3つの重要なステップを取る必要がある。
①4つのゾーンを互いに分離するためのガバナンス・モデルを導入する
②ベストプラクティスを各ゾーンに独立して確立する
③4つのゾーンを並列に統率していくための軽量型の企業システムを採用する
著者 ジェフリー・ムーア
1946年生まれ。TCG Advisors社 創設者兼経営パートナー キャズム理論の創始者として知られるマーケティングの世界的権威。米国ビジネス界を代表するコンサルタント。シリコンバレーの有名なベンチャー企業であるMohr、Davidow Venture社の出資パートナーでもある。 代表的著書『キャズム』は、1991年の初版刊行時からハイテク関連企業のバイブル的存在となり、スタンフォード大学ほか、多くの一流ビジネススクールにて課題図書となっている 。
TOPPOINT |
帯 マイクロソフトCEO サティア・ナデラ |
帯2 セールスフォース・ドットコムCEO マーク・ベニオフ |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.10 | 2分 | |
第一章 プライオリティの危機 | p.13 | 17分 | |
第二章 四つのゾーン | p.39 | 17分 | |
第三章 パフォーマンス・ゾーン | p.65 | 14分 | |
第四章 プロダクティビティ・ゾーン | p.87 | 18分 | |
第五章 インキュベーション・ゾーン | p.115 | 14分 | |
第六章 トランスフォーメーション・ゾーン | p.137 | 19分 | |
第七章 ゾーンマネジメントの導入 | p.163 | 8分 | |
第八章 セールスフォースとマイクロソフトにおけるゾーンマネジメント | p.175 | 24分 | |
さいごに | p.212 | 1分 |