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2017/06/26更新

誰がアパレルを殺すのか

181分

12P

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不良在庫を生み出し続けるアパレル業界

洋服を作り、それが消費者に届くまでの流れを「サプライチェーン」と呼ぶ。アパレル企業が直接、または商社やOEMメーカーなどを経由して工場に洋服を作るよう指示し、完成した洋服はアパレル企業が専門店に卸す、もしくは百貨店や直営店などを通じて消費者に販売するというのが流れだ。

川上から川下へと洋服が移動していく中で、必ず不良在庫が生まれる。工場がアパレル企業の需要を見込んで作った洋服が予想よりも売れずに余ったり、セールで売り切れなかったりした商品が不良在庫となる。作った商品が見込みほど売れず、不良在庫が発生してセールに回るのは他の業界でも珍しくない。アパレル業界が他と違うのは、大量の売れ残りを前提に価格を設定し、ムダな商品を作りすぎている点だ。アパレル市場は約20年で2/3に縮小している一方で、国内供給量は約2倍になっている。

アパレル業界が大量の「ムダな」商品を作るようになったきっかけは1990年代、バブルが崩壊して景気が悪化し、それまでDCブームに沸いていた市場が、一気に冷え込んだことが最大の転機だった。それまでは、どんなに高い値段を付けても、消費者はブランド名に引き付けられ、店の前に長蛇の列を作って洋服を買いに来た。しかし、そんな黄金時代は終わり、消費者の財布の紐は急に固くなった。

内輪の論理によるビジネスモデルの崩壊

そして、大手アパレル企業は苦戦する中で、ユニクロや欧米ファストファッションが成功する。ユニクロや欧米ファストファッションは、アパレル産業の川上から川下までの情報を正確に把握し、サプライチェーン全体を合理的に管理している。消費の変化に応じていち早く工場や売り場に指示を出すのが大きな強みだ。中国での大量生産や積極的な出店攻勢で注目を集めていたが、強さの本質はサプライチェーンのすべてを把握している点にある。だが、それに気づかなかった既存の大手アパレル企業は、製造コストを下げられると、安易に中国生産に舵を切った。中国で大量に作り、スケールメリットによって単価を下げる。代わりに大量の商品を百貨店や駅ビル、SCやアウトレットモールなど、様々な場所に供給した。消費者のニーズに目を向けず、需要に関係なく、大量生産し、その結果として大量の不良在庫が発生するようになった。そして2014年頃に崩壊を迎えた。

買いたい服がない

アパレル業界が手を染めた大量生産、大量出店というビジネスモデルは、業界のあらゆるプレーヤーを不振に追い込んだ。不振を受けた場当たり的な対策は、商品の技術力や企画力の低下も招いた。OEMメーカーに「何でもいいから、売れ筋商品を持ってきてくれ」と頼み続けるうちに、自ら売れ筋を生み出す力を失っていった。