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2017/05/03更新

日本の工芸を元気にする!

194分

2P

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創業300年、中川政七商店

10代政七は工場生産と歩合給という、当時としては画期的な制度を導入している。麻織りは農閑期の女性の仕事だったが、晒場と織場を建てて、そこで織子を雇って作業にあたらせた。11代巌吉は、高度成長期の日本での製造が難しくなる中、生産拠点を韓国、中国へと移しながらも、昔ながらの手績み、手織りの製法を守った。父である12代巌雄は、茶巾を足がかりに、茶道具全般を扱う卸売業に事業を拡大する。麻の良さを日常で感じてもらおうと、麻生地の雑貨と和小物を扱う遊中川を立ち上げた。

何ものにもとらわれずに生き続けていくこと

中川政七商店の13代社長に就任したのは2008年2月。まだ寒いある日、天理の寿司屋に父と2人で出かけた。2人きりで外食したのは、後にも先にもこの一度だけだった。注がれたビールを普段は飲まない自分が形ばかり口をつけるのを待って、「現役を退いて、おまえを13代社長に就かせるにあたって、言っておきたいことが2つある」と父は切り出した。1つは、自分の代で中川家の財産を1/3にまで減らしてしまったという告白。もう1つは極めて意外な言葉だった。「会社を潰そうがどうしようがおまえの勝手や。好きにやればいい。もし潰れたら笑ってやるだけや。ただ1つだけ伝えて起きたいことがある。何ものにもとらわれるな。おまえは麻というものを大切に思っているが、それもどうでもいい。商売を続けることを第一に考えろ」

父も歴代当主たちも、その時代時代を生き抜くために変化と進化を重ねてきた。もしも、奈良で作った麻生地だけにこだわっていたら、中川政七商店はとうの昔になくなっていただろう。格式張ったことを好まず、家訓や社是などない家だが、何ものにもとらわれずに生き続けていくこと。それが中川政七商店が300年にわたってもっとも価値を置いてきたことなのかもしれない。

日本の工芸を元気にする

時代の荒波に揉まれながら、会社を成長させようともがいてきた歴代当主たち。そのバトンは、13代目に渡された。考え抜いた末に一つの答えを見つけた。「日本の工芸を元気にして、工芸大国日本をつくる」だった。

工芸を取り巻く環境は厳しさを増すばかりである。後継者がいない、子供に継がせたくないというところも多い。技術力や実績があっても先が見えないから、続けられないという。普通の人の生活から工芸品が消えて市場が縮小した結果、多くの作り手や産地が同じような状況に置かれている。

工芸メーカーが窮地に陥れば、中川政七商店の存在基盤も揺らぎかねない。そこで中川政七商店はコンサルティングや、直営店や展示会を通じて商品の流通をサポートすることで、全国の工芸産地で元気な工芸メーカーを作り、産地の一番星として輝かせる取り組みを行っている。