創業300年、奈良の小さな老舗企業が時代とともに変化し、事業を継続してきた物語。13代社長になり、卸売業から小売業、SPAへと業態転換し、現在では各地の工芸メーカーの支援を通じて、日本の工芸を復興させる活動が紹介されています。
■創業300年、中川政七商店
1716年に奈良で創業した中川政七商店は、2016年に創業300年を迎えた。事業の内容は、手績み手織りの麻織物を作り続けてきたとなるが、歴史を振り返れば、それぞれの時代の当主が環境に適応し、新しいことに挑戦しながら事業を続けてきたことがわかる。
麻を白くする晒の技術が高いことから珍重された奈良晒は、徳川幕府から御用品指定を受けるなどして、17世紀後半から18世紀前半にかけて全盛期を迎える。初代の中屋喜兵衛が中川政七商店を創業したのは、ちょうどその頃だ。しかしその後、近江や越後といった他産地の技術力が上がってくると、原材料である苧麻を東北や北関東などの遠方から陸路で調達していた奈良は、価格競争に負けて次第に押されるようになる。そして、明治に入ると武士の裃という主用途の1つを失った奈良晒の衰退は決定的なものとなる。そんな中でも9代当主である政七は品質を守り続け、風呂上がりの汗取りや産着という新しい需要を作り出し、宮内庁御用達の栄誉も受けている。
中川政七商店はコンサルティングや、直営店や展示会を通じて商品の流通をサポートすることで、全国の工芸産地で元気な工芸メーカーを作り、産地の一番星として輝かせる取り組みを行っている。
著者 中川 政七
1974年生まれ。中川政七商店代表取締役社長 大学卒業後、2000年富士通入社。2002年に中川政七商店に入社し、2008年に代表取締役社長に就任。製造から小売まで、業界初のSPAモデルを構築。「遊中川」「中川政七商店」「日本市」など、工芸品をベースにした雑貨の自社ブランドを確立し、全国に約50の直営店を展開している。 2009年より業界特化型の経営コンサルティング事業を開始し、日本各地の企業・ブランドの経営再建に尽力している。2016年11月、同社創業300周年を機に十三代中川政七を襲名。2017年には全国の工芸産地の存続を目的に「産地の一番星」が集う日本工芸産地協会を発足させる。 2015年に「ポーター賞」、2016年に「日本イノベーター大賞」優秀賞を受賞。「カンブリア宮殿」や「SWITCHインタビュー達人達」などテレビ出演のほか、セミナー・講演も多数。
エコノミスト 5/2・9合併号 2017年 5/9 号 [雑誌] 一橋大学大学院教授 楠木 建 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.2 | 2分 | |
プロローグ | p.12 | 9分 | |
第一章 老舗の跡を継ぐ | p.27 | 24分 | |
第二章 家業を会社にする | p.67 | 15分 | |
第三章 ビジョンが生まれる | p.91 | 18分 | |
第四章 十三代社長に就任する | p.121 | 15分 | |
第五章 ビジネスモデルが機能し始める | p.145 | 21分 | |
第六章 三〇〇周年を迎え撃つ | p.179 | 23分 | |
第七章 日本の工芸を元気にする! | p.217 | 24分 |
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