理念の実現を本気で目指す組織の作り方
「社是」「経営理念」「ガイドライン」には「自由を方向づける」という意味もある。自分が取り組むべき業務がある中で挑戦するためには、ある程度の自由が必要だが、何も方向付けるものがなければ、社員は何をすれば良いかわからなくなる。
経営理念の「実現」を目指す会社に変革していくためには、できるだけ多くの社員が関わる、全社横断のプロジェクトチームが必要だと考えた。そこで3つのチームを作った。
①つくるチーム
経営理念や主要事業のビジョンだけでなく、全部署がそれぞれの「ビジョン」を策定する。各部署のビジョンは、原則メンバー全員で話し合って決める。ビジョンをボトムアップで策定し、組織図の各部門名の下に書き込んだ「ビジョンツリー」を作成し、社員に公開する。このビジョンツリーを経営理念のところから自分の所属部署のところまで順番に読んでいくと、会社の経営理念と自分の仕事のつながりがつかめるようになる。
②伝えるチーム
実際につくられたビジョンを伝え、浸透させることを目的とする。企業文化はトップダウンでつくられる。経営理念を伝え、浸透させるために、最も重要なのは経営陣である。経営陣自ら率先垂範できなければ、若い人たちもついていかない。そこで「役員の心得」という五カ条を作り、役員の顔写真入りポスターを社内に貼る。半年に1回、それぞれの役員が担当する部門の社員が無記名で、役員が宣言通りに行動しているかを5段階評価する。
③チェックチーム
自分の仕事とビジョンのつながりを、日々感じていられるかを調査する「ビジョンアンケート」の定期的な実施と分析報告を行うのがチェックチームである。しがらみやフィルターを通さない会社の事実をあぶり出すには、記名・無記名を使い分けた社員アンケートが効果的である。
経営理念に共感し、ひりひりするような挑戦をも共にできる選りすぐりの同志を集めることは、会社の成長にとって絶対に欠かせないものである。そしてそれは、人事部の大切な仕事になる。
経営理念と企業文化に合った人材を採用する
いい加減な採用をすると、どうしても価値観にばらつきが出る。価値観は社員の行動を規定する。皆が一定の価値観の下で働くことで基本的な行動が統一され、生産性が高まる。人が数十年の人生で培ってきた価値観を変えるのはなかなか難しい。だから、なかなか変わらない価値観を変えることに注力するよりも、同じ価値観を持つ人を採用することに注力する方が明らかに効率的である。
そこで採用方針を「徹底的に経営理念と企業文化に共感した人材だけを採用する」ことに変更した。どれほどスキルが高くても、即戦力としては喉から手が出るほど欲しくても、ビジョンやカルチャーにズレを感じたら採用しない。