プロジェクトはそもそも不確実なものである
まず、プロジェクトの円滑な進行を考える時に、改めて認識しなければならないことは、「プロジェクト」そのものが「不確実」な性質を持っているということだ。お客様の要件に基づき、システムを構築していくが「要求されたレスポンスを満たすため、予想以上の機能改善が必要となった」、「結合テストでの確認で、初めてプログラムに非互換があることが発覚した」など、様々な予測していなかったことが起こる。にもかかわらず、マネジメントする現場では「いかに綿密な計画を立て、その計画通りに進行するか」という点に終始して、管理体制やルールが策定されていることが多い。
人間の行動特性によってタスクは遅延する
ITプロジェクトの不確実性は、人間の心理や行動にも影響を与える。プロジェクト計画時、各メンバーは確実に完了できる余裕を持たせた工期を申告してくることが多い。この工期が、プロジェクト全体の期間に収まっており、かつ計画通りにすべて進行すれば全く問題ない。しかし、実際にスタートすると、徐々に遅延が起こり始めるケースが多い。理論的には必ず納期を守れるはずなのに、なぜかいつも遅延が起きる。ここには、メンバーの人間心理と行動特性という落とし穴がある。人間は、滞りなく進めば計画した工期より早く終わるタスクでも、その工期が終わるタイミングで作業が完了するように進めてしまいがちである。そのため途中で不測の事態に陥ると、十分な余裕があったにもかかわらず、タスクが遅れてしまう。この行動特性は個人の資質に関係なく、あらゆる人間に共通する。
CCPM理論
ITプロジェクトの問題の解消に有効なのが「CCPM理論」である。その特徴は次の5つである。
①マルチタスクを排除する
マルチタスクを排除し、仕掛り中の作業の数が極力少なくなるように、リソースを集中させ、短期でタスクを完了させる。
②クリティカルチェーンによるマネジメント
プロジェクトのリソースの制約を考慮した最長経路「クリティカルチェーン」で、無理のない計画を策定し、進捗をマネジメントする。
③個々のタスクからバッファ(安全余裕)を取り出す
申告された工期を機械的に半分にする。個々のタスクから取り出したバッファは、プロジェクトバッファとして集約、管理する。メンバーの心理特性から生じる余計な時間を解消し、プロジェクトの期間短縮と効率化を実現する。
④バッファの消費状況で、プロジェクトを管理する
プロジェクト全体の進捗状況は、最長チェーン達成率とプロジェクトバッファの消費率で判断する。
⑤フルキットの状態にして、タスクに取り掛かる
タスクに必要な万全の準備(フルキット)が整うまで、スタートさせない。いくら早くから始めても、準備不足のままでは結果として無駄が生じる。