新たな収入源で復活
ドラフトでもう1人選手を採ったら赤字に転落するような状況が続いていたカープの2007年の最終利益は1700万円。赤字転落は親会社を持たないチームにとって存続の危機だ。球団にとって安定的な収入源だったテレビ放映権料は、地上波での全国放送からプロ野球中継が減っていくことで、30億円以上あったものが10億円台になった。
お金がないから戦力を失い、勝てなくなる。1990年代後半からのカープの低迷は資金難によるところが大きい。そして2013年からのAクラス浮上と2016年の優勝の要因は、新たな資金源をいち早く確立し大きく育てた経営判断の結果と言える。その新たな資金源が、入場料収入と、オリジナルグッズの販売収入だ。
2009年に新球場効果で180万人を超えた観客動員数は150万人を下回ることなく、安定的な入場料収入を球団にもたらしている。これにはマツダスタジアムの「また行くたくなる」仕掛けが大きく貢献している。また、球場に足を運ぶ人に対して、多彩なオリジナルグッズをアピールしているのも大きい。2016年には、入場料収入とグッズ販売収入のいずれも50億円を超えることが確実視されている。放映権収入がやせ細った今、球場へ足を運ぶファンが球団を支えている。
新球場を3世代の集う場所に
60、70代になると、野球しか楽しみがなかった時代の人達が多く、その人達が足腰が弱くなっても楽に来られる球場が一番いいんじゃないかというのがあった。専門のアルバイトを常時配置して、車椅子のお客さんのお迎えからエレベーターの乗り降りまで全部やり、レンタル用の車椅子も用意。さらにパーティールームなども作り、野球の好きな人と興味のない人が一緒に楽しめるようにした。そもそもマーケットそのものが小さいから、3世代を絶対に取り込まないといけなかった。3世代、兄弟、家族、小さい子供を連れたママ友、皆が集う場所を作ること、競技場とは違うものを作っていくことが重要だった。
カープ女子がどうして増えたのか
カープ女子に多いのは、ファンが選手と同期して一緒に成長するパターン。絶対的な憧れから友人に近い感じになっている。球団の資金的な理由から、図らずもカープの育成方針は、「打つ、守る、投げる」のすべてが揃った完成品の一流人材を採るよりは、そのうちの1つだけでも良いから素質のある人材を採って、2、3年以上かけて磨いていく。この原石を磨いていくというパターンが、友達感覚で「下手でもいい、一生懸命なところを応援したくなる」というカープ女子の心を掴んでいる。
今の時代は「AKB48」などの会いに行ける等身大のスターがもてはやされる時代。ごく一部の人しか知らないような下積み時代から応援して、苦労やチャンスを共有する、そういうパターンに近いのだ。