社員の創造性と生産性を高めるために、マネジャーはどうすればいいのか。ハーバード・ビジネススクール教授が研究から導き出した、社員のパフォーマンスを高める方法が紹介されています。
■インナーワークライフとは
ビジネスの成功と社員の幸せという二重の楽園を築くにはどうすればいいか。その実現の秘訣は豊かなインナーワークライフ(個人的職務体験)を生み出す環境を作り上げること。ポジティブな感情、強い内発的なモチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育める状況を作り出すことだ。
インナーワークライフとは、職場での出来事に対する反応や状況認識を通じて体験する認識、感情、モチベーションから成り立つ。パフォーマンスにとって不可欠なインナーワークライフは個人の職場での経験にとって重要なものだが、普通周囲からは認識できない。そのため、インナーワークライフの重要性を理解しているマネジャーでさえ、目で見て計測できないのに、どうやって対処すればいいのかとジレンマを抱えることになる。
ビジネスの成功と社員の幸せという二重の楽園を築くにはどうすればいいか。その実現の秘訣は無料の食事でも運動施設でもない。その秘訣は豊かなインナーワークライフ(個人的職務体験)を生み出す環境を作り上げること。ポジティブな感情、強い内発的なモチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育める状況を作り出すことだ。
豊かなインナーワークライフとは仕事そのものから得られるものであり、仕事に付随する特典から生じるものではない。その獲得の第一歩は社員に達成しがいのある何か、例えばグーグルのように「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」という使命を与えることだ。明確な目標、自主性、サポート、リソースなど、社員が日々の仕事を実際に進捗させる際に必要な物事を提供することも求められる。さらに豊かなインナーワークライフは、アイデアや、そのアイデアを提案した人物を尊重するかどうかによっても左右される。
■インナーワークライフに影響する三大要素
インナーワークライフに強い影響を与える要素には次の3つがある。
①進捗の法則
やりがいのある仕事が進捗すること。個人的に意義のある目標へ向けて前進した時、あるいはその目標が達成された時、期待と現実がかみ合って人は気分が良くなり、自己効力感がポジティブなものになり、次の仕事により張り切って取り組むようになり、心も次の物事に移っていける。
②触媒ファクター
仕事の進捗をサポートするもの。例えば、明確で意義深い目標や、十分なリソース、協力的な仕事仲間がいると感じると、即座に仕事や組織への認識、自らの感情、モチベーションが向上する。
③栄養ファクター
仕事において誰もが欲しがる「人間関係」のこと。部下の優れた働きに労いや評価を与え、彼らを励まし、感情的なサポートを提供すると彼らのインナーワークライフに栄養を与えることになる。
著者 スティーブン・クレイマー
心理学者。リサーチャー 組織内における主観的体験、成人発達論、乳幼児の知覚的・認知的発達などが専門。ハーバード・ビジネス・レビュー、アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナルほかに多数の論文を寄稿。 アマビール教授とは長年にわたって共同研究を続けている。
著者 テレサ・アマビールハーバード・ビジネススクール教授 ベンチャー経営学を担当。同スクールの研究ディレクター。 35年以上にわたり創造性、生産性、モチベーション、職場環境について調査し、その研究成果や理論をアップル、IDEO、P&G、ノバルティスなどの企業や、政府、教育の各組織に提供している。 全米ギフテッド教育協会E. Paul Torrance Award、リーダーシップ・クォータリーBest Paper Awardほか受賞歴多数。 世界の経営思想家ランキング「Thinkers50」に3期連続で選出。TEDや世界経済フォーラムなどにも登壇。
帯 作家 ダニエル・ピンク |
帯2 スタンフォード大学教授 ロバート・サットン |
帯3 日本ラグビー協会コーチングディレクター 中竹 竜二 |
帯4 ローランド・ベルガー会長 遠藤 功 |
帯5 リクルートエグゼクティブエージェント 森本 千賀子 |
日経ビジネスアソシエ2017年4月号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 35年の研究から導き出した「マネジメントの新常識」 | p.8 | 11分 | |
第1章 組織の最前線の風景から――世界的メーカーの破滅への道のり | p.24 | 17分 | |
第2章 インナーワークライフ――認識と感情とモチベーションの相互作用 | p.48 | 17分 | |
第3章 インナーワークライフ効果――創造性と生産性が高まる | p.72 | 27分 | |
第4章 「進捗の法則」の発見――マネジャーにとって最も大切な仕事 | p.110 | 21分 | |
第5章 進捗の法則――やりがいのある仕事が前に進むよう支援する | p.140 | 17分 | |
第6章 触媒ファクター――仕事がうまくいくよう支援する | p.164 | 34分 | |
第7章 栄養ファクター――人が気持ちよく働けるよう支援する | p.212 | 33分 | |
第8章 進捗チェックリスト――好循環を維持し、悪循環を断ち切る | p.258 | 26分 | |
終 章 マネジャー自身のインナーワークライフ | p.295 | 11分 |