あらかじめ決められたリーダーの特性は存在しない
これまでのリーダーシップ研究はほとんどが、リーダーの「個性」に焦点を当ててきた。しかし、個性を前提とすれば、リーダーシップとは「個人が有する特性」となってしまう。いつ何時も当てはまるリーダーシップ特性「これだけ備えればあなたも立派なリーダー」というものは存在しない。あるリーダーにとって有効に働く特性が、必ずしも他のリーダーにとってもそうとは限らない。
そうではなく、リーダーシップを語る場合、「周囲の人々との関係性」をその前提に据えるべきである。置かれた状況を自らがどう変えうるか。リーダーは、まずそれを考えなくてはならない。その上で、自分が備えている、有効に働くであろう資質を見出すこと。そして活かしていくことが鍵なのだ。
リーダーシップの原理原則
①リーダーシップは状況に左右される
現状を観察し理解する能力はリーダーシップの鍵だ。優れたリーダーは組織の重要な「兆し」を見逃さない。その上で、自分自身の持てる能力、リーダーとしての資質を意識的に活用しながら「状況に即して」行動をとる。
②リーダーシップは肩書きを問わない
組織内の地位とリーダーシップにつながりがあるのは確かだ。しかしそれは、いわば決め事の域を出るものではない。肩書きというものは、リーダーシップを考える上で、必要条件でも十分条件でもない。優れた組織ではリーダーがいたるところに存在している。
③リーダーシップは関係性に根ざす
リーダーシップとは、リーダーとフォロワーとの相互関係の中で、連綿と再生産され続ける。何らかの望ましい個人特性を備えてさえすれば優れたリーダー問いうことではない。良いリーダーは、自らの周りの人たちとの複雑に入り組んだ関係を、積極的・双方向的に深化させていく。
本物のリーダーを形づくる要素
最も重要なのは、リーダーが「正真正銘の」・「本物の」リーダーであることだ。リーダーが「本物である」ことなしには、お互いを信頼しあって力を合わせることなどできない。「本物のリーダー」を形づくる重要な要素は次の通り。
①発言と行動が一致していること
②常に首尾一貫していること
③自分らしくあること
本物のリーダーには、揺るぎない原点に立脚した一連の行動こそが求められる。より優れたリーダーになるためには、自分自身に忠実でなければならない。そしてその「自分らしさ」を磨き続けばければならない。
自分らしくあること
部下は、人格を有する「人物」を求める。優れたリーダーは、役割を果たす上で役立ちうる「自分ならではの持ち味」を認識し、活用している。自分らしさは、リーダーとしての役割を担って部下と接していく中で引き出され、実用に資するよう磨かれていくものである。