「ニューヨーク・タイムズ」のコラムニストが、現代人が忘れている内的成熟の価値と「生きる意味」を根源から問い直した一冊。ビル・ゲイツが年間ベストブックに選んでいる。
■2種類の美徳
人間の美徳には大きく分けて2つの種類がある。1つは履歴書向きの美徳、もう1つは追悼文向きの美徳。前者は、就職戦線において自分を有利にしてくれ、他人から見てわかりやすい成功へと導いてくれるような能力。後者は、葬式の時、集まった人たちの思い出の中で語られる美徳だ。それは人間の核として存在しているものに違いない。大半の人は、明らかに、自分の根本的な人格を磨くことよりも、職業的な成功を目指す生き方を選んでいる。
創世記の天地創造の物語には2つの側面があり、それ故に、私たち人間の本性にも2つの対立する側面がある。「アダムⅠ」は、私たちの中のキャリア志向で、野心的な面。アダムⅠは何かを創り、築き上げること、新たな何かを発見することを望む。そして高い地位と勝利を求める。「アダムⅡ」は心の内に何らかの道徳的資質を持とうとする。内なる自分を晴れやかで曇りのないものにしたい、善き行いをするだけでなく、善き存在であることも求める。アダムⅡは他人に深い愛を注ぐこと、他人への奉仕のために自己を犠牲にすることを欲する。
アダムⅡの論理はアダムⅠの反対だ。それは道徳の論理であり、経済の論理ではない。
現代の文化は、人間を、外から目に見える能力や成果で評価する文化である。その文化の下では「忙しいこと」が良いこととされる。そして、誰もが必死になって「自分はこれだけすごいことをしている」と互いに言い合うようになった。人は皆、ただひたすら人の称賛を求める機械のようになっている。自分の人生の価値を、他人に褒められるかどうかでしか判断できなくなっている。こういう文化には大きな問題がある。持てる能力を発揮することは大いに奨励されるが、その反面、道徳心を磨くことを勧める人は皆無に近くなってしまうのだ。自分の人生をどの方向に進めれば意味あるものにできるか、それを判断するには、どうしても道徳心を磨く必要があるはずだが、そのことはほとんど誰も言わない。
著者 デイヴィッド・ブルックス
「ニューヨーク・タイムズ」コラムニスト 「ウォール・ストリート・ジャーナル」「ザ・ウィークリー・スタンダード」「ニューズウィーク」の記者・編集者などを経て、2003年より現職。 PBS、NPR、NBCなどのテレビやラジオ・コメンテーターとしても知られ、イェール大学でも教鞭を執る。 アメリカ芸術科学アカデミー会員。
帯 マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ |
週刊ダイヤモンド 2017年 2/4 号 [雑誌] (上げ下げマンション大調査) 作家 佐藤 優 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに アダムⅡ | p.9 | 10分 | |
第1章 大きな時代の変化 | p.20 | 19分 | |
第2章 天職―フランシス・パーキンズ | p.41 | 48分 | |
第3章 克己―ドワイト・アイゼンハワー | p.94 | 40分 | |
第4章 闘いの人生―ドロシー・デイ | p.138 | 46分 | |
第5章 自制心―ジョージ・マーシャル | p.189 | 37分 | |
第6章 人間の品位―ランドルフとラスティン | p.230 | 32分 | |
第7章 愛―ジョージ・エリオット | p.266 | 50分 | |
第8章 神の愛―アウグスティヌス | p.321 | 40分 | |
第9章 自己省察―サミュエル・ジョンソンとモンテーニュ | p.365 | 40分 | |
第10章 大きい私 | p.409 | 47分 |
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