集中力の低下の原因を紹介し、それを改善するための方法を提案する一冊。ハーバード大学医学部で長年講師として勤めた精神科医が、集中力を取り戻すために書いた処方箋。
■外部要因が集中力を阻害する
ADD(注意欠陥障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)といった障害が遺伝的な原因によるのに対して、ADT(注意欠陥特性)は環境が原因である。すなわち、ADTは外部要因によって現れたり消えたりするものだ。
ADTは人が生活の中のストレスに対処しようとして生じるものであり、その兆候は短期的にはむしろ助けとなるため、場合によってはその状態が「定着」し、生活に余裕ができたりストレスが軽くなったりした後も習慣として固定化してしまうことがある。
ADTは私たちの集中力を乗っ取るような、絶え間ない要求や誘惑、出来事によって引き起こされ、私たちの頭を耳障りな騒音でいっぱいにする。ADTの兆候は、最初は目立たず、次第にひどくなる。
集中力には様々な強度や持続時間がある。一方の極端な状態は「集中力の欠如」である。これを目的を持たず、とりとめのない「ドリフト」状態と呼んでいる。これは心地よい状態にもなれば、時間の無駄にもなる。
自分では気づかないが、脳はこのような「一見何もしていない時間」を使って、たくさんの仕事をしている。脳がいわゆる「デフォルトモード」に入って、神経網を活性化させるのだ。脳は問題に取り組んだり課題に集中したりしている時の方がエネルギーを多く消費していると考える人もいるかもしれないが、実はそうではない。ドリフト状態では、深く集中している時と同じか、それより多いエネルギーを消費する。
ドリフトと反対の極端な状態が「フロー」である。これは最も集中した精神状態を指す。フローにおいて、人は自分のしていることに深く没頭するため、自意識を全くなくしてしまう。
集中とは、つまり短いフロー状態である。そして、集中とフローとの間に「柔軟な集中」の状態がある。柔軟な集中の場合、フローほどの高揚感は伴わない。しかし、夢中になって他の何にも注意を向けられなくなるということなしに、課題に集中する能力を保ったまま、同時に新しいインプットを受け入れることができる。
目新しさ、すなわち人があまり通っていない道には柔軟な集中のチャンスがより多く存在する。一方、繰り返しや類似、習慣的なものには柔軟なチャンスが少ない。但し、あまりに目新しさばかりが先行してしまうと混沌と混乱に至る。だからこそ、私たちには目新しさをコントロールするための仕組みが必要である。
精神科医 ハーバード大学医学部にて20年以上にわたって講師を務めたのち、現在はマサチューセッツ州サドベリーの認知力・情感医療で知られるハロウェルセンター所長。 ADD(注意欠陥障害)およびADHD(注意欠陥・多動性障害)の権威として世界各国のメディアに登場している。
帯 AOL CEO ティム・アームストロング |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 16分 | |
Chapter1 デジタル依存症 | p.42 | 20分 | |
Chapter2 マルチタスク | p.74 | 16分 | |
Chapter3 アイデアホッピング | p.100 | 19分 | |
Chapter4 心配性 | p.130 | 18分 | |
Chapter5 おせっかい焼き | p.158 | 19分 | |
Chapter6 ヘマばかり | p.188 | 14分 | |
Chapter7 理想の集中状態を手に入れるための訓練法 | p.212 | 15分 | |
Chapter8 身体の力を生かす | p.236 | 15分 | |
Chapter9 精神の力を生かす | p.260 | 6分 | |
Chapter10 人間関係の力を生かす | p.270 | 10分 | |
Chapter11 感情の力を生かす | p.286 | 15分 | |
Chapter12 仕組みの力を生かす | p.310 | 10分 | |
Chapter13 もう、ダラダラ癖に悩まない | p.326 | 8分 | |
おわりに | p.338 | 1分 |
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