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2016/11/08更新

株式会社の終焉

155分

3P

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株高政策は資本家のためにしかならない

20世紀末までの金利と株価は、同じ国民国家の「景気」を反映して動いていた。しかし、21世紀になると、それぞれの見る対象が違ってきた。株価が見ているのは20世紀末に誕生した「電子・金融空間」をホームグラウンドとする資本帝国に君臨する「資本」。利子率が見ているのは近代の「地理的・物的空間」に立脚する国民国家の「経済」である。

そして、安倍政権が重視しているのは株価である。株価を重視する場合には、トリクルダウン理論「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」が成立していることが前提である。しかし、20年近くにわたって一人当たり賃金は減少しており、世帯の金融資産は減っている。即ち、トリクルダウンは生じていない。円安・株高政策を採用するアベノミクスは「資本帝国」の政策なのである。

株価が高値をつける一方、利子率はあくまで実物投資の収益率を反映しているため、「地理的・物的空間」の膨張がなくなれば、ゼロ金利になる。つまり、現在のマイナス金利は近代の終わりの象徴である。

成長の限界

株式会社は「無限空間」を前提として初めて利益極大化が可能である。しかし、IT革命とアフリカまで到達しようとしているグローバリゼーションで、21世紀は「閉じた地球」となった。「無限」空間を前提にした近代が「有限」空間に直面すると、成長自体が収縮を生むようになる。ドイツや日本の自動車産業の燃費競争における不正や日本の家電産業の不正会計がその表れである。

もはや「地理的・物的空間」には「より速く、より遠く、より合理的に」を実現する場所はなくなった。そこで作り出されたのが「電子・金融空間」だったが、これはバブルの生成と崩壊を生み出す。1980年代から現在までの36年間でバブル崩壊は11回となり、バブルは3年に1度生じては弾ける時代となり、「地理的・物的空間」にも大きな損失を及ぼし、資産をなくす無産階級を大量に生み出すことになった。

経済成長を目指す必要はない

今なすべきことは、21世紀はどんな時代かをまず立ち止まって考えることである。21世紀は「より速く、より遠く、より合理的に」を追求する「技術の時代」ではない。

今の日本は、資本係数は世界最大、自然利子率はゼロである。資本が過剰に積み上がって、コンビニエンスな社会、即ち、いつどこでも欲しいモノ・サービスが手に入る社会を築いた訳であり、無理な成長を目指す必要はない。「地理的・物的空間」が消滅して、成長メカニズムが崩壊した訳だから、成長を目標にすればその反動の方が大きくなる。