数々の著書で予測を的中させ「EUの予言者」と称される経済学者が、未来予測の手法を紹介している一冊。
■未来を予測することは備える事である
限界はあるにしても、未来を予測するのは可能だ。予言ではない。今後、我々の未来、つまり、個人及び共同体の未来の主要な部分は、論理と直感を駆使する極めて特殊な思考法を用いれば予測できるだろう。
未来を「知ろうとする」または未来を「予言しようとする」のは、諦めることに等しい。未来を予測しようとするのは備える事であり、望むのであれば自由に生きる事、つまり「自分自身になる」事なのだ。「自分自身になる」は、自分が願う自己になる事だ。
自分の運命に働きかける事ができると考える者は、まず自分を待ち受けるだろう未来を把握する必要がある。それは、必要なら運命の流れを変えるためであり、自分が望む軌道に未来を近づけるためだ。
怠惰は予見の最大の敵だ。予測は自由の最良の味方だ。我々各人にとっても人類全体にとっても、予測は、暗黒のシナリオが現実になるのを避ける唯一の手段でさえある。従って、勇気をふるって予測しなければならない。予測に必要な時間を確保すべきだ。
次の質問に対する自分の回答から自己の未来について多くを学べる。
①自分にとっての不変の要素だと考えていることを明示して欲しい
②これまでに、自分に起こった重要な出来事を正確に予測したことはあるか
③自分に起きる、あるいは自分に影響を及ぼす可能性のある出来事の未来について、論理的帰結を導き出す訓練をしているか
④自分の肉体、精神、能力を維持し、大切にするために何をしているか
⑤学ぶことは好きか
⑥将来、自分にどんな出来事が起きるのかを考えたことはあるか
⑦最悪のシナリオを想定しているか
⑧他人の自分に対する態度をよく見ているか
⑨自分が信頼できると思う人のリストはあるか
⑩20年後の計画はあるか。5年後ならどうか。未来までに達成したいことのリストは作ったか
少なくとも年1回は、真摯にこの質問事項に詳細に答える機会を持たなければならない。
あらゆる未来予測は行動を促すこと、無知のヴェールが一旦取り除かれると全てが変化することを、目の当たりにするに違いない。その時、不安さえも行動の原動力となる。悲しみさえも喜びの障害でなくなる。なぜなら、予測することにより、いずれ自分がこの世から消え去る時であっても、自己を超えて思考するようになるからだ。
著者 ジャック・アタリ
1943年生まれ。経済学者 1981‐1990年、ミッテラン政権の大統領特別補佐官を務め、多くの次世代の人材を育てた。1991‐1993年、「ヨーロッパ復興開発銀行」の初代総裁となる。 1998年にはNGO「プラネット・ファイナンス」を創設し、現在も途上国支援に尽力している。 2007年、サルコジ大統領に依頼され、大統領諮問委員会「アタリ政策委員会」の委員長となり、21世紀に向けてフランスを変革するための政策提言を行なった。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊東洋経済 2016年10/15号 [雑誌](大学より濃い校風と人脈 高校力) 会社学研究家 奥村 宏 |
週刊ダイヤモンド 2016年 11/19 号 [雑誌] (最強の高校 中高一貫VS地方名門) 丸善・ジュンク堂営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.15 | 11分 | |
第1章 天の予言、神々の権力 | p.37 | 23分 | |
第2章 時間を操る、人間の力 | p.81 | 20分 | |
第3章 偶然を制御する、マシンの威力 | p.119 | 32分 | |
第4章 私の未来予測 | p.179 | 21分 | |
結論 | p.218 | 2分 |
セネカ 道徳書簡集―倫理の手紙集 [Amazonへ] |